天井に繰り広げられる天国のパノラマ
天井の構造はいずれも8段に築かれ、上に行くほど狭くなるようにした平行八角支石式である。平行支石の1段目に
三角形の火炎文16個を描き現世と天国を区別し、続いて2段目に天に登る蓮華と蓮華峰をかわるがわる描き、天国から蓮華を通して
化生するという仏教式の化生法を浮き彫りにしている。平行支石の3段目には、各種のめでたい動物と仙人を描いた。
南東面には舌を長く出して右を向いて走る白虎と琴を弾く二人の人物を描いており、南西面には真ん中で
おんどり二羽が向かい合って立っている。北面は、青龍と木、座った人物を描写し、北東面は二人の力士が
テッキョンのような武術を競う姿を描いた。5層からなる八角支石部には、太陽と月を含めた各種の星座、
めでたい動物達、笛を吹いたり琴を弾く仙人達が多様に表現されており、高句麗時代の人々の死後の世界に
望む天国が生々しく描かれている。 |

舞踊塚天井の天国の世界 |
殺さぬ矢じりの秘密
舞踊塚の代表的作品である狩猟図を目を注いで見れば、すぐにでも飛びそうな矢先がちょっと変だということが分かる。
矢じりというものは、尖っていて相手に刺さると決定的な一撃を与えることが出来ることものだが、
まるで石ころのような矢先を使っているのだ。伽揶時代の矢じり、慶州の沙正洞で出土した新羅の狩猟図に出て来る矢じり、
敦煌石窟にある狩猟図の矢じりなどはいずれも尖った矢じりである。従って、この高句麗の矢じりは非常に特異であるといえる。
鹿を捕らえる武人や虎を狙う武人、いずれもこんな矢じりを使っているのは、それだけの理由があるのだろう。
今までこの理由については、二つの説がある。一つは殺さずに気絶させたり麻酔をかけて生け捕るためのものだという説、
音を立てて相手を驚かせる鳴鏑というものだという説である。高句麗山城から出土した高句麗時代の矢じりを分析して見ると、
狩猟図の矢じりは二つの説がいずれも適合する。石ころのような形ではあっても丸いのは音を出すための仕掛けであり、
2本で作られた先端だけが矢じりになっているものである。矢じりの先を尖らせず、生け捕るのに使い、
骨や角に穴を開けて矢先に挟んで音がするようにした、弓の国高句麗の傑作品である。 |