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長白山定界碑は清の康熙帝が、山を自国の領土とするために吉林総督の穆克登に一方的に建てさせた国境碑です。
この碑は間島問題が起こるまで、中朝間に30年にわたる紛争を起す原因になりました。
ところが、1931年7月28日から29日のうちに突然姿を消し、行方不明になってしまいました。
当時、長白山に登る人々は安全のために日本の国境守備隊が動向する慣例になっていました。
1931年7月2日午前9時半頃、一般登山者が定界碑所在地でしばし休憩した時には、定界碑は厳然と存在していました。
しかしその後、軍隊と別れ、頂上までたどり着き、天池付近で野宿してから戻って来た頃には、定界碑はなくなっており、その代わりに
長白山登山道と書かれた木看板が立っているのみだったといいます。
立っていた位置は山頂から南東へ4km、海抜2200mのところでした。
消失前の長白山定界碑
わざわざ新しい看板を立てたところを見ると、これは計画的に行われたもので、単なるいたずらとは考えられません。
当時、日本当局で探そうと思えばすぐに探し出せたでしょうが、そんな意思もなかったようです。この石碑は相当に重いものであり、
遠方まで運ぶことは不可能です。付近に埋めたか捨てたはずなので、すぐに捜査に着手していれば探せたことでしょう。
現在は立っていた当時の写真と拓本のみが残っています。
碑文は、上部に「大清」と横書し、
‘烏喇ハ管 穆克登, 奉 旨査邊, 至此審視, 西爲鴨, 東爲土門, 故於分水嶺, 勒石爲記, 康熙 五十一年 五月十五日’と刻印され、
1881年、清が間島開拓に着手した際、朝鮮側から抗議したものの、清は「土門は図們江(豆満江)を指す」として、聞く耳を持たなかったそうです。
1909年、日本は南満州鉄道の敷設権を得た代償として間島を清に譲渡してしまいました。(間島協約)
そんな状態でも長白山の領有権は確定されぬままでした。 ただ鴨緑江と図們江を境界にするということなので、長白山で二つの
川の水源となる小川を探し、それをもとに国境を引ければ良いという考えが一般的でした。
ところが後でよくよく調べて見ると、図們江は長白山天池から直接発せず、やや離れた湖から発していることがわかり、
そのために鴨緑江〜図們江の間の長白山領有権が確定出来なかったのです。
1986年、中国と北朝鮮は、この問題を協議し、1990年、 21個の境界石を立てて長白山の領有権を分割しました。
その結果、長白山天池を囲む大きな峰 16個のうち、 9個は北朝鮮に、7個は中国に帰属することとなり、
長白山天地沿岸全体の 60%が北朝鮮領として確定されました。
▲中国・北朝鮮間の 21の境界碑 の一つである5号境界碑
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▲「空白の北朝鮮現代史 ―白頭山を売った金日成―」
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白頭山を売った金日成?
2000年、元朝鮮総連活動家の金基燦氏(筆名)が「白頭山を売った金日成」という本を韓国で出版し、騒然となりました。
この本は、2003年には日本でも出版されています。
この本によれば、1962年に朝中辺界条約が結ばれ、秘密裡に長白山の半分が中華人民共和国の領土になったといいます。
長白山天池もその中間に国境が引かれ、このことは北朝鮮の公式の地図でも確認出来ます。
著者の見解では、朝鮮戦争で中華人民共和国が北朝鮮を応援した見返りであろう、としており、
金日成が国民には秘密にしたまま、自己の利益のために領土を売り渡した、と結論付けています。
この本が出版されてから、"金日成が長白山を 160億ドルを見返りとして売った"という説が流れました。
しかし冷静に考えれば、これは到底不可能な話であることが明白です。
まず何よりも、1962年という時期は中国の文革前であり、現在と異なり、中国は決して豊かな国ではありませんでした。
160億ドルという大金を自国で捻出するのは無理であり、東北工程も存在しなかった当時、
そこまで無理して長白山を買うだけの理由もなかったはずです。
北朝鮮の立場から見ても、長白山はお金で売れるような所ではありません。
自分たちの政権をあきらめない限り、お金と換えるようなことは出来ません。単純に民族の聖地だからではなく、
北朝鮮政権のメッカであると同時に共産党の聖地だからです。
たとえ事実でないとしても、北朝鮮と金日成は北朝鮮の国家 (朝鮮民主主義人民共和国)、 党 (朝鮮労動党)、軍隊 (朝鮮人民軍)が、
いずれも長白山から始まったと宣伝して来ました。長白山をお金を見返りに売るなどということは、自政権の根拠を売却することです。
金日成が自分の行いを悔い改め、率先して政権を返上し、民主化を推進する気でも起さない限り、
長白山を中国に売るなどということは出来ないことだったはずです。
現在では韓国の世論も、この書物の内容に対して懐疑的な向きが多いようです。
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