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24.黒龍江省 チチハル市 龍沙区 明星村(下)

それでも希望は残っている
人が抜けて学校・工場がどんどん門を閉ざし
今では'西満州富裕村'の名声はない

ひととき西満州第一の富裕村として名声を馳せた明星村。しかし今、この村でその頃の 栄光を覗える跡はあまり目立たない。中国の大都市周辺のまあまあな住居地域であるとい うだけのことで、村の姿に別段良い所を見出すことができない。人々が移住して来るとおり、 その時その時の都合に合わせて原っぱを切り開き、大まかに家を建てるようにしただけで、 計画的に村を作ったわけではないから、家と路地の配置は無秩序という感じさえ受ける。 'ど うせやるなら村をもうちょっときちんと作れば良かったのに…'と言うと、方サンドク書記がすぐに "それは先祖の責任であって、私の責任ではない"と机を叩く。

朝鮮族の村ではあまり見かけない、一つの屋根に煙突が10本もある家も見える。ひと頃、 あの屋根の下に10世帯が住んだという話だ。しかし今は煙の立つ煙突が二軒に過ぎない。 村見物に出たついでに村の外の堤防を抜けてずいぶん長い時間をかけて嫩河まで出てみた。 松花江の2大支流らしく、広い嫩江の水は濁っている。川沿いでは底を浚って砂利と砂を集めている骨材採取作業が盛んだ。

村に帰って来た記者に方書記は、明星村を守るため、村をまた育てたいという夢を話す。

"朝鮮民族は疲れる民族じゃないですか。いつも争い、悲しみ…。そしてまた先祖がせっかく開拓 した地を放棄するということでしょうか?それはだめでしょう。"という彼の駄目押しが頼もしい。

もちろんそれが容易ではないということを彼はよく分かっている。ますます凋落している村の姿が これを立証している。人が抜け、学校が門を閉めた。職員が80人余りにもなった村の農機械修理 工場も門を閉めたし、チチハルの漢族が頻繁に出入りした13軒の村食堂も今は6軒に減った。

ところが明星村にはまだ希望があると方書記は信じる。チチハルという大都市に近い明星村に希望が なければ、どこに希望を見出せるのかというのだ。


▲鬼ごっこをしている明星村の子供

明星村を守るための彼の努力は、まず漢族を受け入れないことから始まる。外地に発って漢族に家を売って 去って行く人もたまにいるが、こういう場合、彼は絶対に諸般の証明書類を受け付けない。村政府で書 類を受け付けてくれなければ、当然、登記移転が不可能になる。家を買った漢族がここに抗議すれば 、方書記は家主に文句言いなさいと図太く振舞う。家を売った人が抗議すれば、'家だけ取り離して売る ならともかく、どうして先祖が血の汗流して開拓した土地まで売り飛ばすのか'と叱る。 'この土地だけは どんなことがあっても守る'と言う彼の固執は、誰も曲げることが出来ない。 '漢族と友達として付き合うこ とはできても、同じ村には住むことができない'と言うのが彼の信念だ。現在、この村に住んでいる漢 族は5戸。彼らは皆、方書記が村の責任者になる前から村に住んでいた人々だ。

方書記に、漢族が村に入って来て住みだしたら、家をトラクターで潰して追い出した吉林省梅河口市 華豊村の江原道出身・李ヨサム村長の話をしてやると、"そんな人がいらっしゃるのなら、江原道の 人でも全羅道の人でも来て欲しいね"と言いながらゲラゲラ笑う。

'全羅道でも…'という彼の言いかたに思いがけない地域感情が隠れていることを感じる。ついでにここの 朝鮮族の地域感情に話題を向けてみた。

まずここの人々が考える慶尚道人の気質は、どんなものであるのか知りたい。 "義理固いんじゃないの? 損しようとも約束を守って…。一言で言えば男らしい"と方書記と村の年寄りたちは異口同音に言い切る。 長い間、慶尚道の人々が自ら当たり前だと信じて来た慶尚道気質が、満州といえども変わらないようだ。

方書記ら、ここの朝鮮族は慶尚道は男らしく、北の女は男によく仕え、平安道の男はひどく気まぐれだなど、 出身地域による人々の性向をそれなりに分析する。全羅道出身に対する偏見も韓国の慶尚道人たちと違わ なかったし、咸鏡道出身に対する不信感も強い。


▲村で生産した有機肥料を、ある住民が調べている。


▲明星村で食堂を運営している金ギョスンさん(56)が孫と一緒にポーズを取る。

桓仁から平安道の人々に追い出されたせいか、方書記の平安道に対する偏見は格別だった。 '彼らの気まぐれがとてもひどいから、独立軍も平安道人は3年ほど見守った後に加入の可否を決め たのです'と言うほどだ。話を総合して見れば、ここの慶尚道出身者たちが信じて一緒に付き合える人は やはり慶尚道出身者だけというのだ。私たちの根深い地域感情をこの地でも確認し、気持ちがどうもすぐれない。

方書記が急に、記者に見せてあげたいものがあるから車に乗りなさい、と急き立てる。彼の案内し た所は、村の南側にある閉校。ひと頃、200人以上の子供たちが遊び回ったこの小学校では、もう子 供達の代わりに方書記と住民の夢が育っている。豊かな明星村の裏山を作って行く酵素肥料工場に 様変りしたのだ。化学肥料や農薬を使わない有機農法で緑色食品を開発し、全国市場を狙えば、まだ 農業は勝算があるとここの人々は信じている。里人たちは韓国業者の助けを借りて鶏糞を利用した有 機肥料15tを、今年試験的に生産した。この肥料で150畝(15町歩)の田に有機農法を試して見るというという。

明星村も人手不足に苦しんではいるが、まだ村の土地だけはたいてい朝鮮族が持っている。農業を大々 的に行う人は30町歩以上を耕し、1年に10万元の収入をあげたりする。

肥料工場に変わった閉校の入口と廊下には、先進学校、省級標準小学、優秀単位などの誇らしい銅版が今ま で残っており、廊下には'静かに'という文句がかかれている。今では騒ぐ子供もいないのだが…。

教室と運動場のあちこちで鋸屑と鶏糞で肥料を作っているが、充分に熟成をさせたせいか、臭いはしない。匂 いと公害で村を汚染させるものは別にある。学校南側の木炭製造工場と村の東に陣取っている製紙工場がそ れだ。製紙工場は中国人が運営するもので、歴史が古かったが、最近韓国人が買い付けて運営している木炭 工場はこんなにも汚染がひどいとは分からず、許可を出したことを後悔しているという。

有機農法と共に、今春にチチハル市に申請した韓国人開発区の指定も、方書記が期待をかける部分だ。開 発区に指定されれば、道も舗装して韓国業者の誘致も可能になり、また西部第一の村に様変りすることが できるはずだと方書記は期待する。現在はキムチ工場と木炭工場ぐらいが精一杯だが。

韓国業者が投資できる分野は、やっぱり飼料工場を含む食品加工産業になるはずだと方書記は勧める。

このような構想が現実になれば、彼はこの町内を瀋陽の満融村、花苑新村のような朝鮮族集中村に育て たいという。500戸ほどをさらに受け入れれば、学校もまた建て、道も新たに直し、西満州第一の村という昔 の名声に再び挑戦できるはずだと方書記は確信する。

村中央の食堂に来た。 "ここでの取材が終わったら、次はどこへ行くの"という方書記の問いに、"北朝鮮" と答えると、彼は"ほう!北朝鮮も判るんだね"と感嘆する。

500gにつき、韓国ウォンで2千ウォンくらいする牛肉をふんだんに焼きながら、南朝鮮と北朝鮮間の一悶着(?)の話 を聞いた。ずいぶん前から川を間に挟む二つの村は、毎年体育大会を開きながら勝負を競って来た。ぶらんこ 、板跳び、シルム、サッカー、バレーボールなどの色々な種目で競う勝負は常に熾烈だが、大概は人口が 多い明星村の勝利で締め括られた。

ちょうどこの日、取材陣に同行してくれた黒龍江新聞のベ・ボンソブ社会部長(46)は、北朝鮮である'鮮 明村'出身。 "明星村はどんなことをしても勝とうとばかりに審判まで買収したそうです。"いつも負け る悲しみを味わった彼が、そろそろと方書記を刺激し始める。この発言に熱くなった'慶尚道男'の方書 記は、座席で食卓を拳でぶん殴って語調を高める。 "あの頃、サッカー監督は求めても、誓って審判 をカネで買うような真似はしなかった"と言いながら。それでもベ部長は構わずに怒らせる。 "あれま! その監督が審判の恩師なのに。つまり審判を買ったのと同じじゃないの…。"

ずいぶん昔のことで、またいがみ合う二人の争いは、見る者達を微笑ませる。

(嶺南日報)


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