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21.黒龍江省 湯原県 湯旺郷(上)

"ここからだけでも今までに200人が韓国へ嫁入り"


▲湯旺郷所在地である金星村の全景。湯旺の朝鮮族戸口は9千名に肉薄するものの、実際の居住人口は3千名に過ぎない。

"韓国への嫁入りのために辛いです。" 湯旺朝鮮族郷政府の事務室で挨拶を交わすのもそこそこに、金ドック民生助理(41)は泣き言から始める。 郷政府の社会福祉及び戸籍処理担当幹部である彼の手には書類が一枚握られている。李さん(女 49)の 戸籍書類だ。彼女は韓国へ金儲けしに行った夫が、他の女性と暮し始めたという事実が分かると、怒りを 堪えることができずに離婚を選択した。それからは自分も韓国に嫁入りするために関連書類を申し込み、今、 金さんの世話になっているところだ。

来るやいなや、韓国ブームに病んでいる朝鮮族社会の実状にまた接することとなり、気分が悪くなる。 このような時はいつも、記者がまるで加害者であるかのような、申し訳ない気持になるのは一体どういうわけなのか?

そんな記者の気持ちを察した金さんは、"去年、ここから韓国に嫁入りした人が40名ですが、 ここから40名ということは、全国的にはどれだけでしょうか?黒龍江省でも胡麻粒みたいに小さな 村なのに…"と言いながら言葉を濁ごす。それが全てではない。金さんは韓国との門戸が開放され て以後、今までここから韓国に嫁入りした娘が200人を超えると言って、記者を驚かせた。湯旺だけ で韓国に嫁入りした娘が200人が超えるとは…。開いた口が塞がらない。湯旺の朝鮮族の人口が多い としてもせいぜい幾千人であろうに、その中から妊娠可能な女性200人余りが抜けたと考えれば、問題の深刻さはすぐ判る。

記者が200人という数字に驚いて、郷全体の朝鮮族人口の現況が気になると、金さんは記者 を他の部屋に案内する。ユ・フンソブ党副書記(40)は村の現況を詳しく知っている。全体で1万2 470人のうち、住民登録上の朝鮮族人口は8858人。しかし壮青年たちが韓国や外地に出て しまい、実際の居住人口は3千名にしかならない。娘と壮青年層が珍しくなった村、湯旺には 今では外地へ輸出する人力もない。先日、山東省の韓国企業が20〜40歳の働き手を求めに来 た事があったが、その会社は人口8千名を超えるこの村で、働く人を一人も見つけることができなかった。

外地に出た人の中で、韓国に出た人は2千名余、 1400人は合法的に出たが、住民登録を変える とか密航船に乗るなど不法的に出た人も600人余りに達する。猫も杓子も韓国に出ているが、ブ ローカーに6万元を払ってからも出る事が出来ず、莫大な借金を抱えてしまった人もたまにいて、密 航船に乗って行き窒息して死んだ人もいる。以前、韓国でも大きく報道されたあの事件だ。

ユ副書記といろいろな話を交わしていると、安っぽい服装の老人が入って来る。そうでなくてもこの村の 老人を捜してみようとしていたところなので、すぐに挨拶をして話をねだった。

青松郡から9才の時に満州へ渡って来たという黄チュンモ氏(77)は、中国でいわ ゆる抗米援朝と称する朝鮮戦争の参戦者だ。しかし彼は韓国人とその話をする のが嫌そうにもじもじする。彼は記者の頼みでやむを得ず"私は八公山まで行ったの です"と自分の戦争体験を打ち明ける。戦争を起こす前、金日成と毛沢東は朝鮮族だけで構 成された東北義勇軍を北朝鮮の正規軍に編入させる事で条約を締結、これに従って黄氏など 3万名余の東北義勇軍が1949年、北朝鮮正規軍に編入された。 3個師団に組み合わせされた 東北義勇軍出身の朝鮮族部隊は、他の北朝鮮正規軍と一緒に1950年の夜明け、一斉に38度線を越えて南侵した。


▲湯旺の住民たちが延辺夕陽歌舞団の公演を見るために村劇場の前でうろうろしている。
この人々の間に壮青年層は捜しにくく、深刻な離農現象を実感することができる。


▲湯旺派出所。朝鮮族村にはお金が多いという噂が流れ、交番があるにもかかわらず
泥棒が多いので、 住民たちは自ら見巡りをしている。

黄氏はその後、八公山の戦闘で 負傷し、平壌と妙香山等で治療を受け、国軍と国連軍が北進した時に中国の吉林省盤石へ帰還したと打ち明けた。

故郷の人たちに銃口を向けたわけだが、申し訳ないと思わなかったのかと皮肉に問うと、彼は"下っ端 に何の罪がありますか?しかし韓国の人々は面白くないだろうけどね"と不機嫌そうに答える。 彼は抗米援朝に参加した功績で、61年から湯旺郷政府で働き、86年に退職した。

そんな黄氏も今は韓国ブームのおかげを被っている。末の息子(41)が4年前から韓国で働いているのだ。 金儲けはどうにかこうにかしているようだが、末っ子のことを思えば年寄りの心も楽ではない。韓国で働いて 死ぬとか怪我をする人が多いというので、心配が並大抵ではない。たぶん彼は息子が帰国するまでは落ち着かないだろう。

"みんな、子どもの勉強のためにそうしているんだ。ここにこのままいたのでは子どもの小中学の勉強すらさせ にくいから…。"老人はそう言い残して、席を外す。黄氏だけでなくこの村の老人たちは最近、気ぜわしい。 ようやく村の劇場で開かれる延辺夕陽歌舞団の公演時間が迫って来たのだ。

再びユ副書記が村の話を続ける。湯旺には全部で14の村があり、そのうち8つの村が朝鮮族村だ。お互いに違う 村とはいっても、朝鮮族と漢族村はたいてい道一つを挟んで分けられており、外部の人が見ると同じ村のように見える。

原籍地が慶北である人々が多い郷所在地の金星村は、600戸余りの大きな村だ。ユ副書記は、"この地方の 人たちはすべて慶尚道訛りを使います。その中でも金星村は特にひどいですね"と金星村に特に強い 慶尚道の色彩があることを仄めかしてくれる。

しかしユ副書記も住民たちの実際の原籍地を細かく把握することはできない。ここの朝鮮族戸籍の 戸籍原簿に'朝鮮'という出身国家名と共に出身道まで記載するようになったのは、わずか11年前か らのことだった。その前には、特に文化大革命時代には韓国出身ということ自体が'政治闘争の対象'に なるほどだったから、お互いに原籍地を隠すばかりで、出身地域を明らかにしなかったし、知ろうともしな かった。このような雰囲気のせいで、子たちにも知らせずに世を去った人が多く、今では原籍地がどこ か分からない人も多い。ただ共通的に慶尚道訛りを使うから皆、慶尚道出身というだけのことだ。

大きな村ではあるが、金星村の未来も心細い。 "猫も杓子も韓国や都市に出るのに、誰が村を守ります? やがては漢族の村になるでしょう。農業をする村で、現在、農家は30戸に過ぎないです。昔には農家が 500戸を超えていたのにね。"村の指導者であるユ副書記の表情が暗い。

金星村の住民たちは、珍しくも自発的に見巡りをする。韓国式で言えば自律防犯隊というわけだ。 面倒ではあるが、朝鮮族村にお金が集まるようになってから漢族が朝鮮族の物品を盗む事例が頻発、 仕方なく見巡りをしても農機具からちょっとした生活必需品まで、よく盗まれる。

このような盗難事件の主犯としては、漢族の商人たちが挙げられている。お金が貯まったら朝鮮族はケチになり、 取引をしないという噂が広がり、漢族商人の出入りが頻繁になり、それとともに品物を盗まれることが多くなった。

ユさんは"昔は財布も持たずに暮したんだが…"と言いながら舌打ちをする。

(嶺南日報)


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