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◆ 分科会C <滋資県の集客力は強いのか弱いのか?>
記事No/ 19 (記事No: 16への返信記事)
投稿者/ 風来坊
投稿日/ 2003年2月12日(水)00:29
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分科会C <滋資県の集客力は強いのか弱いのか?>

担当パネリスト 高崎邦子 

○高崎

私どもでは観光地別に宿泊者数を集計をしております。これを見ていただくと、96年の3月からの1年間に滋賀県の宿泊施設に泊まられた方の数は14万1.064人ということがわかります。日本全国で比較をしても47都道府県の中で滋賀県は41番目になっています。

また、先ほどのパネルディスカッションでも「金閣寺、清水寺、大原、延暦寺などは何度も訪れているけれど、滋賀県には一歩も足を踏み入れたことがない」とおっしゃる方がいる、という話が少し話題になりました。延暦寺を京都の一部と思っている方が多いわけです。よく言われる事に滋賀県は通過県である、ということがあります。

では、何故滋賀県は通過県なのか、ということを一旦観光の問題と切り離して考えると、やはり京都に近すぎるということが挙げられます。ですから一つ目のポイントとして、この近接性、これだけ近いということをどう活かしていくのかということを考えてみたいと思います。

私どもの財団法人日本交通公社では日本全国約9.000件の観光素材につきましてその評価づけを行っています。評価は特A、A、B、C、Dの5段階で、特A級とは我が国を代表する資源でかつ世界的にも誇示し得るもの、我が国のイメージ構成の基調となり得るものとなります。滋賀県では延暦寺、京都府では修学院離宮庭園などが特A級にあてはまります。これに次ぐランクをA級としており、その誘致力の強さ、全国的に観光重点地域の原動力として重要な役割を持つものを指します。京都の清水寺、建造物としての桂離宮などがこのA級に相当しています。B級は地方スケールの誘致力を持ち地方のイメージ構成の基調となり得るもののことで、東尋坊、奈良公園の鹿、飛騨高山の朝市あるいは札幌時計台、横浜ベイブリッジなどがこのカテゴリーに分類されています。

では、滋賀県の観光資源について考えてみたいと思います。観光資源の中で人文資源数というものがありますが、特A級の人文資源は全国で20カ所しかなく、その一つが今申し上げた滋賀県の延暦寺です。数値的に言えば滋賀県は資源数1であり、シェアは5%(20カ所のうちの1カ所)になります。

A級人文資源は全国に178カ所あり、滋賀県は彦根城、琵琶湖、園城寺の3件(対全国シェアは1.7%)を有しています。B級人文資源は全国1.092ヵ所のうち、56ヵ所が滋賀県内にあります(対全国シェアは2.1%)。

こうして見ると、滋賀県の人文資源は水準的には上にあると言えます。さらに先ほどのお話にも出ましたが、日本の重要文化財のうちの6.6%が滋賀県にあります。史跡、名勝、天然記念物でも2.4%のシェアをもっています。ですから京都と同じ、もしくはそれ以上の観光資源に恵まれていると言えるわけです。

ただし単純に京都府と滋賀県を比較すると、歴史的建造物や文化財、伝統工芸の密度の面ではやはり京都のほうが圧倒的に勝っていると言えるでしょう。宿泊施設や交通の便といったインフラの面、それから知名度でも、なかなか簡単に太刀打ちできるものではないと思います。

京都ですら観光客の減少に悩まれている現在、例えば京都と滋賀の観光資源を組み合わせた「京滋観光圏」といった広域ルートの設定も一つの手法だと思います。けれど、京都と同じような資源を組み合わせて協力するだけでは、京都にとっては観光客を奪われ、結局は京都のホテルに泊まっていただいて、延暦寺を見るついでに効率的に回れる大津周辺だけを日帰りで周遊するといった形にとどまる程度になるでしょう。

京都との関係で滋賀県の集客力のアップを考える時には次の点がポイントになると思います。一つは京都からの日帰りではなくて滋賀県に泊まっていただく、ということ。二つ目は京都に近い大津周辺に集中するのではなく、県下全体に来ていただく、ということ。それから三つ目としては、京都のお客様を奪うのではなく、新たなお客様を呼び込み、そうした方が京都にも訪れるということでお互いにメリットになるという方法。

これらの条件を満たすためには、「京都にはない滋賀県ならではの魅力は何か」ということを考え、そして、それを全面に打ち出しながら文化財などの観光資源とうまく組み合わせていく必要があると思います。

滋賀県ならではの魅力について、私はリゾート性を一番強調したいと思います。「リゾート」という言葉は、繰り返し訪れることが語源だとか、滞在性の高い保養地を指すというような様々な定義がありますが、ここでは快適性という観点からとらえていきたいと思います。

滋賀県でリゾートという時、当然まず第一に考えられるのが琵琶湖だというのは言うまでもないことです。湖というのは当然景観、それから視界、視野も広がっていくし、水が命の源という点からも快適性に貢献する非常に大きなメリットがあります。京都を目的に来られた方であっても滋賀県のゆったりと広がる水辺空間に滞在していただいて、そこを拠点にして、昼間に京都を探訪していただくというのが十分に魅力的な商品になるのではないかなというふうに思います。

京都の場合は首都圏から来られる方が43%、近畿圏内が12%です。逆に滋賀県の場合は首都圏からが21%、近畿圏からが43%ということになっています。京阪神あるいは中京から繰り返し滞在に訪れていただいているということは、まさに先ほど申し上げた「リゾートとしての可能性が十分にある」証拠とも言えます。リピーター客が多いことでパーセンテージが高くなっているという仮説が立てられると思うのです。

近郊リゾートの条件としては、1]アメニティー=快適性、2]ホスピタリティー=もてなしの心、3]アクセシビリテイー=足の問題、どれだけ便利にそこに行けるかということ、そして4]リーズナブル=経済性、の四つがキーワードになると思います。

1]アメニティーについては京阪神あるいは中京との違いをどのように演出するのかを琵琶湖周辺地域全体として十分に検討する必要性があると思います。リゾートという観点からすると、京阪神などとの最大の違いは当然自然環境に見出すべきであり、それが誰にでも体感できる形、わかりやすい形で実現されていくことが必要だと思います。

2]ホスピタリティーについてはもう言い尽くされている気もしますが、ちょっとした心遣いの積み重ねが地域のファンを増やしていくと思います。

3]アクセシビリティーについては比較的よく確保されているとは思います。ただ、リゾートという観点からは湖西方面の国道161号線の渋滞を何とかする必要性があるでしょう。

4]リーズナブル=経済性という面では、これも繰り返し言われていることですがカップルやファミリーが繰り返し利用する本当のリゾートにするためには、日本の宿泊施設は高すぎると言われています。

近郊リゾートとして発展させていこうと思う時、琵琶湖は景観的にも精神的にも、非常に安らぎを与えてくれ、快適性を高めてくれます。でもそれは「リゾートとして、有利な材料が一つある」ということに過ぎないと認識していただきたいと思います。

また、「京阪神・中京からの日帰り行楽地」と書きましたが、先ほどの滋賀県の観光入り込み客の目的別集計によると、一般行楽という内容が番多いと申し上げました。これは簡単に言えばレジャー施設、娯楽施設を目的に来られる方が一番多いということです。いくら「リゾートを目指す」「長期滞在を目指す」といっても、今一番多い日帰りで来られているお客様を無視するわけにはいきません。マスターゲットをねらう場合はイベントなどを含めて、「にぎやかし=ショーアップ」的な要素を求められる場合が多くあります。「長期滞在のお客様に喜んでいただける」ビジョンを持ちながら、今の観光客の大きな傾向である日帰りのお客様でも楽しんでいただけるというシステムを積極的に取り組んでいく必要性があると思います。

ところで「通過県からの脱却が必要なのか。」通過するのではなくて滋賀県を訪れてほしいというのがここまでの基本的なスタンスでしたが、逆に「通過県であってもいいではないか」という逆説的な考え方をしてみてもおもしろいかなと思ったわけです。日本最大の国土軸を貫いている県として、膨大な数の人々が行き交っているわけですから、ちょっとした仕掛けを工夫すれば、観光客を大幅に増やす可能性は十分にあると思います。通過県であることを嘆くばかりではなく、商売のネタが目の前を流れているという考え方をすればよいアイデアが浮かぶのではないかと思います。

では、21世紀に果報をいただくために何をすべきなのか…。一つ重要な視点としてここでご提案したいのは「バリアフリー」という考え方です。旅行者を取り巻く様々な障害=バリアを取り除いていく努力をしなければ「来てください」という言葉が「来ないでください」と同義語になってしまう側面もあると思います。

昨年の推計によると、日本人の障害者旅行の潜在マーケットは年間4.500億円と見積もられています。ところが実際に顕在化しているのはその20%に過ぎないわけです。「観光地、宿泊施設での受け入れ体制が不十分なので」というのが一番大きな理由でしたから、やはりそういった方に安心して来ていただける町づくりをこれから目指していく必要性があると思います。

バリアフリーは、何も障害者の方だけを対象にしている話ではありません。バリアとは多くの旅行者にっきまとっているわけです。例えば子供の視線の高さに合わせた施設づくりや、外国語によるサイン計画など、非常にたくさんの課題が残されていると思います。

最後に日本における観光の今日的課題にはどういうことがあるのかを少しご紹介をしてお話を終わりたいと思います。

「長期滞在型旅行のための工夫を」というのは、先ほどから何回も申し上げてきました。つまりリゾートの考え方にもとても重要なことだと思うわけです。日本人の今の日本国内旅行の平均滞在日数、これは平均1.7日、つまり1泊2日が中心になっているわけです。海外の場合、ハワイで4泊6日、香港でも2泊3日か3泊4日、その他にも1週間滞在はざらでありません。そういう提供がなぜ日本国内ではできないのでしょうか。

お客様に滞在を楽しんでいただける工夫をどうするのか。例えば連泊をするとどうしてもお金がかかるので、2日目は20%ぐらい割引をするといった料金設定も必要だと思います。同時に滞在している間にどういうふうに時間を過ごさせるのかという、観光地全体としてのシステムづくりに発展させていかねばなりません。暇な時にぼうっとしているだけでも心やすらぐとか、あるいはスポーツや釣り、読書ができるとか、博物館や美術館を見て回れるという時間消費ができるハードとソフトが必要です。

滞在中の足の確保をどうするのかということもあります。レンタサイクルやレンタカー、これらを旅館で借りて旅館で返せる仕組み、あるいは共通のシャトルバスを利用して隣の町や隣の市域と連携をしながら一定の合理的なトラフィックシステムを提供していくなど。

2番目に「自然環境文化等の保全に配慮した観光地の整備」、要するに観光地とは美しさと、もてなしの心がなくてはだめだということです。当然といえば当然ですが、「住んでよし、旅人によし」という土地がやはり魅力的な観光地でしょう。

これからはそれほど高度成長する時代ではありませんから、やはり腰を据えて自分の観光地を見直して、美しくしていく必要性があると思います。

課題の最後、「新しい情報システムを活用した観光サービスの高度化」ですが、要するに情報発信がやはり決め手だということです。もちろん今はインターネットを使うのが一番早い方法ですが、インターネットが必ずしも普及しているとはいいがたいのが現状です。

滋賀県の集客の現状から始まって、京都との関係性はどうしても避けて通れないという話、次に京都と切り離して滋賀県のよさをPRしていくためのリゾート性、つまり、通過県と言われていること自体がメリットになるのではないかということ、それから今後の集客力について、最後に今日本全体で起こっている様々な課題を少しかいつまんでお話させていただきました。ここからはぜひ皆様方での議論にしていただきたいと思います。

○参加者(清水・長浜観光協会 統括マネージャー)

(黒壁は)いろいろな形で成功、成功という言われ方をしますが、我々自身としては実際はどうなのかなという気がしています。

観光客の多くは京阪神、また名古屋方面から北陸の温泉なりへ行かれる時の、ちょうどお昼時の立ち寄りという色彩がかなり強いと思っています。そういった面では典型的な通過観光地であり、宿泊に関しては2.000人もキャパがないというのが実情です。

○高崎

県外の人間からすると、地域でまとまっていろいろなことをおやりになっていらっしゃる。例えば地域のボランティア活動などもうまく掌握されたというイメージが非常に強いのですが、そのあたりはいかがですか。

○参加者(続)

確かにそういう面では、長浜は割と強いほうだといえるでしょう。どちらかと言えば民間の皆さんが頑張って旗を振って、行政や観光協会は後からついていっている面が非常に強いですね。

「まちづくり」とは英訳したらコミュニティーディベロップメントであるという言葉のとおり、いろいろな人が一つの夢や理想を共有し合い、それに向かって一生懸命協調して遭進ずることができるかどうかだと思います。

○高崎

では、県外からお越しになっていらっしゃる方に、滋賀県にどんなイメージを抱いているのかお伺いしたいと思います。

○参加者(水島・三重県新産業推進課)

通過県というのはある意味で、高崎さんがおっしゃったとおり、ちょっとした仕掛けをしたらすごく大きな力になり得ると思います。特に先ほどの数値で首都圏からの観光客の占める割合が20%強という話がありましたが、三重県の場合、首都圏からは10%以下です。いかにその「降ろす」のが難しいかということで、そういう意味からすると非常に恵まれているような気もしているところです。

○高崎

通過であってもお客様がとにかく通っているという事実、これをいかにして引き込むかによってチャンスはあると考えられます。これをうまく利用することが重要でしょう。

ここまでのところで、何か皆様方のほうから、ご意見やお話はございませんか。

○参加者(滋賀県観光連盟)

一つ、お聞きしたいことがあります。運輸省の広域観光の取り組みの中でタップという事業がありましたが、その時、滋賀県はあえて京都と組まないで岐阜と組む道を選びました。

例えば滋賀県とJTBさんがどういう開発チームを組んでどういうふうにしていったら、通過県を具体的な旅行商品とでき、かつ宿泊県に転換できるかという点、さらにそれは幾らぐらいのお金があれば可能なのかという点をお聞かせいただければ、と思います。

○高崎

今のお話の中に出ました私どもの地域活性化事業は、財団法人日本交通公社の継続した調査をもとに、地域の活性化をするためにはどういったことが必要かという現状課題を整理をして分析をする事業です。

私がここで一つ申し上げたいのは、本当にマスのお客様に来ていただくことがよいのかどうかをぜひ覚悟していただいた上で相談をしていただきたいということです。

○参加者

結局、分相応というか、地域にあったもの以上を目指すと何か無理がくる気がします。その辺りでまた長浜市の清水さんにお聞きしたいのですが、長浜がメジャーになってきたことによって当初とは違ったとか、こんなところが変わってしまった、ということはありますか。

○参加者(清水・長浜観光協会 統括マネージャー)

いわゆる観光公害的なものは確かに長浜の町にもあります。もともと町に元気さをつけるために、観光客を呼び寄せることによって地域経済を活性化することが目的だったわけですが、黒壁を設立した当初は日曜日の昼からカウンターを持って立っていても人が4人しか通らなかったところが、今は年間200万人近く来るわけです。そうすると逆に地元の人は、そんなにたくさん観光客が来るところでは買い物をしたくないという形になり、現在では完全に観光客用の商業地と地元客用の商業地に二極分化しているエリアもあります。

また、長浜らしさがだんだん低下してくるのではないか、という危倶を私自身は持っています。その辺は今後の大きな課題だと思いますね。

○参加者

滋賀県の集客力は、結論から言うと、十分あると申し上げたい。滋賀県の地理的あるいは歴史遺産からして十分集客力を持っていると思います。

それからアクセシビリティーですが、滋賀県はむしろ日帰り型のお客に適していると思います。もしもそうした静かな、この滋賀に泊まって京都を訪ねるといったスタイルを考えるのであれば、交通網についてもう少し考えられたほうがいいと思います。

滋賀県は大いに胸を張って、むしろ日帰り客にその日に楽しんで帰っていただくほうがいいと思います。

○高崎

今の先生のお話が、ちょうど総括の役割を果たしていただいたような気がします。

今日は、皆様方の中での議論も活発で、私自身も大変勉強させていただきました。ぜひこういった機会を一つのチャンスにしていただいて、また折角こういうお話をする場でご一緒になったのですから、この後に交流会もあるそうですが、まだまだお話の足りない部分はそこで詰めていただければいいなと思います。

ありがとうございました。

報告及びまとめ

 

○井戸

これから各分科会のご報告をいただきたいと思います。私も2つの分科会に顔を出させていただきましたが、大変活発な意見の交換があったように受け止めました。

それでは、先ほどと同じように、分科会A、広野さんからお願いします。

○広野

また、私の経験から申し上げると、まちづくりには特効薬はありません。それぞれの症状に合わせて、町に合わせて、自らが編み出していくしかないのです。ですから、結論としてはそれぞれが自分の住む町に立ち返り、そこに足をしっかりつけて、同じ問題と立ち向かう一人ひとりと手をつなぎ合って、自らの土地の再発見と再認識を何度も何度も繰り返すことが大切です。まちづくりはそこからしかはじまりませんし、そこからスタートして元気になることが、やがてはたくさんの人を呼ぶわけです。「あの町、なんかおもしろそうなことをやっていそうやで」というロコミが人を呼び、そしてそこを訪れ満足した人がまた新たな人を呼んでくる。この繰り返しだと思います。そして、外部の人から「この町はいいね」とほめられることで、町の人たちは自分の町を見直し再発見していく。そういういい循環が起こることが大切なのではないかと考えます。

○前田

地域資源を見直し、それを守り育てる観光地づくりということで話し合いました。

例えば、観光ボランティアガイドの方たちは観光資源について、きちっと地域の歴史性や時間性あるいは文化などを反映したガイドを熱心にされていることがわかりました。中には自分の人生を賭けて、自分たちの地域の観光資源に惚れ込んで、それを皆さんにぜひとも理解していただきたいと、熱心に活動を続けていらっしゃる方もいることを知って感動しています。その情熱を観光客に表現することこそ、観光資源を「物」でなく「事」としても伝えることだと思います。

しかし、今日何度も出てきた話ですが、滋賀県の観光は通過型になってしまっている。つまりそこに滞在型の観光に変換していく仕組み自体を考え直さないと、なかなか観光資源のよさを伝えるという場面が実現しにくいという指摘がありました。ただ、そのための知恵は、時間の限られた分科会では出なかったようですが、観光の形態自体を見直さないといけないことがはっきりしました。それには1市1町だけではなくて、県全体あるいは地域全体でそのノウハウをいろいろ検討していく仕組みづくりが必要だいうことが結論になったと思います。

○高崎

まず、長浜の事例をお話しいただきましたが、その中で出てきたのは、やはり観光を発展させるためには官民挙げての熱意が大変重要である、ということでした。それは人と人の、もしくは行政と民間のコミュニケーションであり、本当に意見を闘わせていくということ、それがいい町、いい観光地をつくっていく、ということだと思います。

また、滋賀県は「通過県」であるけれども、人が通ること自体がうらやましいというご意見もあり、つまり通過県であろうが「人」は来ているという事実を再認識させるものでした。要はそこで「降りて」いただく、そのための「もうひとふんばり」によってお客様をもっと増やすことができるのではないか、というご意見も出ていました。

3番目に、観光地としてお客様にたくさん来ていただくことのメリット、デメリットも討論されました。地元住民にとって今まで便利だったものが不便になる可能性。本当に観光地化し集客交流人口を増やすことがいいのか、という意見もございました。

こういったお話を聞きながら、私が思ったのは、「本物とは何なのか」ということです。一時の流行やトレンドに流されることなく地道に、しかも長期的に息長く続いていくことが、地域においては重要なんだろうなと思いました。

○井戸

ありがとうございました。

滋賀県の観光を考える上で一つだけご紹介したいのは、私が今、勤務している滋賀医大の新入生諸君に、秋になると「滋賀の印象」というテーマで授業の30分ほどを割いて書かせている文章があります。80%余りが京阪神の出身で滋賀県出身の学生は大変少ないのですが、代表的なものを二、三、紹介させていただきます。

学生A「滋賀県は京都の陰に隠れていて目立たない平凡な県である。先日の新聞で比叡山、延暦寺が大津市にあることを初めて知った」

学生B「郷里は福井だが、滋賀県は東京へ行く時も、京都、大阪へ行く時もいつも電車でよく通ったが、これまでゆっくり訪ねたことがなかった。滋賀県は通過県である」

学生C「近江商人で知られる滋賀県だが、大津、草津にファッションの店やしゃれたレストラン、大きな書店が少なく、ディスコもない。どう見ても田舎である」

学生D(京都在住の女子学生)「滋賀県は琵琶湖や比良、伊吹の山並みなどすばらしい自然に恵まれている。それに普通の田舎に立派なお寺やローカル色豊かなお祭がある。でもこれまで派手に宣伝されなかった。滋賀県は控えめで清楚な素顔美人である」

なかなか見るところをよく見てくれていると思います。

旅行というのはやはり泊まらないとだめだと思います。学生諸君が歴史地理研究会をつくっており、毎年10人ほど一緒に旅行します。共済関係の安いホテルに泊まる。座棺のような窮屈なお風呂が嫌いで、いつも「おい、みんなで風呂屋へ行こう」と、町の銭湯に早めに行く。地元のおばさん、おじさん方がおられ、地元の言葉が聞ける。「今晩、どこでごはんをたべたらええやろ」とか、いろいろな話が出る。おっちゃん方も自慢話をしてくれる。なにか違う土地へ来たなあという感じがわいてきます。

先ほどから「暮らし」という言葉が出ていますが、やはり地元の皆さんの暮らしにどこかで触れ合えることができる、これが旅の楽しみの一つでもあると思います。本日はありがとうございました。


以下は関連する記事の一覧です。 [一括表示]

[参考]パネルディスカッション(滋賀) - 【風来坊】 2003年2月12日(水)00:22 No: 16
......... ◆ 分科会A <「観光地づくり」とは「まちづり」> - 【風来坊】 2003年2月12日(水)00:24 No: 17
.................. ◆ 分科会B <豊かな資源を守り育てる観光づくり> - 【風来坊】 2003年2月12日(水)00:27 No: 18
........................... ◆ 分科会C <滋資県の集客力は強いのか弱いのか?> - 【風来坊】 2003年2月12日(水)00:29 No: 19


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