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◆ 分科会A <「観光地づくり」とは「まちづり」>
記事No/ 17 (記事No: 16への返信記事)
投稿者/ 風来坊
投稿日/ 2003年2月12日(水)00:24
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分科会A <「観光地づくり」とは「まちづり」> 

担当パネリスト 広野敏生 

○広野

滋賀県は、琵琶湖という大変素晴らしい資産があります。それだけに、それを支えるに足る力が町にあるかどうかが問題になってきます。町の人同士のつながり、人と人とがしっかりつながっていなければ、どんなに素敵な自然や町並みも、そして立派な施設やイベントも、すべてを支えていく能力はその町にはありません。そうならないためには、どう考えどうしたら良いかというのが今日のこれからのテーマです。

今日は、まず皆さん方からいろいろなお話をお聞きしたいと考えています。それぞれが住んでいらっしゃる町、あるいは所属なさっている組織・企業が、どうやれば元気になれるかということをキーワードに、お悩みを聞かせ願えれば大変ありがたいと思います。

○参加者(北村・近江八幡観光ボランティアガイド協会)

悩みというのは、ボランティアガイドのほとんどが、年配の方や定年退職をされた方であるということです。やはりボランティアなので、時間的、金銭的な面から若い方たちがやってみようという気持ちになれないでいるのが現状です。現在、一線で活動されているのは、60から70代の方なので、その後を継ぐ方たちを育成していくにはどうしたらいいのかと思っています。

○参加者(成田・成田美術館)

私はこの長浜市に今年の5月に小さな私立の美術館をオープンしました。

展示してあるものは、私が40年ほどかけて、好きで収集してきたアール・デコ期のルネ・ラリックという方の作品です。

お見えになる方は、大体、噂を聞いて、来てくださる大都会の方です。リピーターの方も結構お出でくださいますが、市内の方は、あまり見に来てくださいません。私どもは個人の美術館ですから、すべて自分でやっています。市の関係の建物や公立の施設というのは入場料が100円とか200円と安いのですが、私どもにみえた市内の方は、「えっ、お金がいるんですか」とおっしゃる方がものすごく多いのです。もう少したくさんの方に来ていただければいいと思いますが、やはり皆さん黒壁のほうに目がいきます。黒壁を見終わってから来てくださって、非常にこれはいいとおっしゃる方もいらっしゃいます。

ぜひ皆さんにもお出でいただきたいと思います。

○参加者(佐藤・徳島県観光交流課)

私の悩みは、大きく言ってしまうと県全体の悩みになるかもしれません。先ほど滋賀県さんは県の面積のかなりの部分が琵琶湖で占められていて、それはいい面も悪い面もあるというお話がありました。徳島県の場合はほとんどが山間部で、過疎の問題が非常に観光以外の面で危倶されてきています。

私は観光の仕事をしており、主に宣伝、誘致という仕事をやっています。最近、グリーンツーリズムとか、エコツーリズムという言葉をよく聞きます。そういったものを過疎地域の中山間地域とか、山間部の過疎の地域に取り組んでいくことによって、地元の何らかの過疎対策や、地域づくりにもつながっていくのではないでしょうか。

恐らくすぐに結果を求めても無理だと思います。しかし、どういう点に留意して進めていけばいいのか、効果的な宣伝をどういうふうに絡めていけばいいのか、その点についてご教示いただけたらと思っています。

○参加者(篠山・滋賀県商工観光政策課観光企画係)

滋賀県では平成8年に琵琶湖博物館を県立でつくり、今年の9月に琵琶湖ホールが完成し、ハードの大きな整備というのは一段落した状況になっています。

今、財政の状況が非常に厳しい中で、予算を編成するにしてもソフトでアイデアを出せと、非常に厳しく言われている状況です。

徳島県さんからもグリーンツーリズム、エコツーリズムという話がありましたが、滋賀県は「環境こだわり県」ということで売っている面もあります。やはり環境との結びつきというのは、これから非常に大事ではないかと考えられます。

それから、人にやさしい観光地をつくるということで、一般的に障害者対応のバリアフリーということも考えています。これから高齢化社会ということで、お年寄の観光客も非常にたくさん受け入れていくべきだと思われます。そういった方を受け入れる体制を、人を中心につくっていくことが必要であり、ボランティアガイドの方の活動の支援についても力を入れていきたいと思っています。

○広野

まちづくりに有効な1つの方法として、イベントというものがあると思います。今日お話するのは、まちに元気を取り戻すために活用されるイベントです。

皆さんはイベントというと、楽団や歌手を呼んできて、何かショーをやらせるというようなイメージをお持ちになっていると思いますが、今われわれが話そうとしているイベントは、イベントが目的ではないのです。あくまでも手段なのです。つまりイベントをつくりあげる過程そのものを我々はイベントと呼んでいるのです。イベントそのものは表の顔です。しかしこれをつくりあげるにあたって、いろいろな町の人たちと関わりを持たなければなりません。賛否両論が起こります。いろいろなトラブルが起こるのです。それを解決しなければなりません。そこに大きなざわめきや揺れが起こります。そういうざわめきや揺れもひっくるめて、我々はイベントと呼んでいるのです。これがまちおこし、まちづくりという中でのイベントの考え方です。この多難な過程こそがイベントの一番大切なところです。ざわめきや揺れが大きければ大きいほど、イベントの効果は絶大です。町の人たち、行政自らが横ぐしに調整し合いながら1つのものをつくりあげていく必要があるのです。それをやらないと最終的にまちおこしとか、活性化だとかは起こってこないのです。そしてこれが起こらないと、町に元気が取り戻せない、魅力ある町にはならない、観光促進にはつながらない、ということなのです。

私は日本の行政の中で仕事をたくさんしてきましたが、住民の最大公約数の意見を大事にしてきたために、今、日本中の町では沈滞、不活性化が起こっています。やはり行政の主になる人が、町の中に賛否両論を起こし、ざわめきを起こすことが町の活性化につながるのだと信じてやっているかどうかがキーポイントになります。

イベントは、こういう市民を巻き込んでいく1つの仕掛け、仕組みなんだということをぜひ認識していただきたいと思います。

では、自らの町の再発見・再認識をさせるためにはどうしていったらいいのでしょうか。私はこれが観光促進の一番基本的なベースになるものだと思っています。ところが、地域への無関心、コミュニティーの喪失という現状があります。いわゆる対話がないのです。人間と人間との関係が途切れているのです。そういう状態が今、全国のいろいろな町で起こっています。そうしたコミュニティーの喪失、地域への無関心という動脈硬化をどう治療していくかが問題です。

自らの町の再発見・再認識をうながす活性化装置を仕掛けるにあたっての、市民サイドからの視点でみると、まず、成果が見て取れる、市民1人1人が自分の目で確かめられるような目標設定をしなければなりません。

次に、各種各層の住民の取り込みです。各種各層の人々を、反対する人も含めて1つの仕掛けの中に取り込んでいくことを考えなければなりません。あらゆる人たちにアタックしていかなければなりません。

もう1つは、地域の歴史とか文化を勉強するのではなく、これと遊ぼうという考え方を持っていただきたいと思います。自分の土地とは何だろう、自分が住んでいるところの歴史とは何だろうかということを知ってもらい、それと遊ぶことが重要な要素となります。

一方、地域への愛着とか、新コミュニティーの創造、元気の回復を目的とするイベントサイドからの視点でみると、町からのメッセージを発信させる発信媒体の確保と、タテ・ヨコの市民組織を確立させるネットワークづくり。もう1つは町のアイデンティティ、「らしさ」の醸成が大切な要素になります。

さらにもう一つ、活性化装置を創り上げるうえで重要なのは、その装置を支える組織です。例えば日本の町には祭というものが必ずありました。そして、その祭を支え運営していく市民組織「講」というものもありましたが、誰もが参加できる形にしなければ地域は盛り上がりません。そこで新しい祭、新しい講という組織をつくりあげていかなければなりません。

今日お話しするのは、フランスにあるルピデゥフという小さな村のことです。ロワール川沿いにある4.000人の村で、古ぼけた城とぶどう畑以外、ほかには何もありません。若い人たちはみんなパリに出ていき、35年前に過疎化の波にさらされました。どんどん人が減っていくのです。そして農業からも人が離れていき、村にはお年寄だけが残ってしまいました。

村に残されたお年寄りたちは、そんな村を何とか魅力的にしたい、せめて、夏になれば外に出ていった子どもたちが、みんな帰ってきてくれるような町にしたいと思いました。本当に単純な思いから始めたことが、35年後の現在、夏の3ヵ月の土日に開催されるそのイベントに、ヨーロッパ各地から数十万人の人がつめかける大観光イベントに成長しました。

そのイベントとは、「野外音楽劇」です。自分たちの村で起こったさまざまな出来事を、古代、中世、近世、そして現代という4ブロックに分けて、すべて村人だけで野外音楽劇をつくったのです。

村の文化団体の活用を考え、歴史劇の中に、配役・裏方も含めて4.000人の役割をつくりました。村のほとんど全員が何らかの形で関わっていく形になりました。夏に開催するので、帰省する子どもたちも親と一緒に出演します。その劇に携わることによって、いつの間にか自分の村の歴史を学んでしまうのです。そしてその村にとって一番大切な歴史的景観である古城を中心とする池のほとりで演技をするのです。今では1回の公演で1万2.000人が入る観客席が簡易的につくられています。まさに、地域の歴史や文化と遊ぼうというものです。

ただし、これはおもしろくないと成立しません。素人芝居ですから、面白くないとすぐに飽きられてしまいます。そこで彼らが考えたのは、パリで一番有名な監督に演出を依頼し、照明、音響、特殊効果、花火なども、今、フランスの最前線にいる人たちにお願いすることです。出演者は村人たちですが、セリフはすべて有名な俳優の声を吹きこんでおき、出演者がそれに合わせて口をパクパクさせるようにしました。そういう野外音楽劇をルピデゥフでは35年間続けてきました。

今では、ひと夏の公演で、村の1年間の予算を超えるだけの収入があり、10年前に財団法人を設立しました。毎年、次の年の公演の準備のために1年間費やされ、そしてそこで得た収益は、その野外劇に使われる費用も含め、自分たちの村をどうするかということや、宣伝費などに使われます。お客さんが来ても泊まるところがないからホテルをつくろうとか、何台ものバスが通るための道をアスファルト整備し、駐車場もつくりました。あるいは宣伝広報のためのFM放送局までつくってしまいました。さらに、その村の歴史を物語る博物館までできたと聞いています。4.000人の村がそこまでやってしまうのです。都会へ出た若い人たちも夏になれば帰ってきて、それに参加する。そんな大きな意味を持った野外音楽劇がそこに完成してしまったわけです。

私は、そのプロセスが大変おもしろいと実感しました。ちょうどその時、私は、富山県・の高岡市というところから、市制100周年を迎えるにあたって、何か町が元気になるようなことをやりたいということで相談を受けていました。本番3年前から高岡の役所の人が集めてくれたオピニオンリーダー30人と、何をやろうか、どんな活性化装置をつくろうかと話し合いました。何度も激論をたたかわせ、先ほど申し上げた賛否両論が起こりました。テーマを何にしようかということもありました。何かわからないけれども、発信性のあるイベントをしよう、各種各層の住民を取り込もう、地域の文化や歴史と遊ぼう、この3つを満足するようなイベントはないだろうかとみんなで考え続けていきました。

ちょうどその時、友人がフランスにこんなおもしろいものがあったといって一冊のパンフレットをくれました。それがルピデゥフの野外劇だったのです。もう即座に飛んでいきました。そしてそのルピデゥフでいろいろ仕掛け・仕組みを教えていただきました。それをそっくりそのまま富山県高岡市というところの市制100周年に当てはめたのです。以来高岡市は10年間、延々とその野外劇を続けています。

内容も、ルピデゥフと同じ「町の歴史」。大伴家持がいた頃から現代まで、その町の歴史を町の人たち1.500人が演じます。野外劇は夏の2日間開催するのですが、衣装を縫ったり、いろいろな装置や小道具をつくったり、何らかの形で野外劇に関わった人たちすべてを含めると、1回当たりで3.000人から4.000人の市民が参加した計算になります。

基本的に、劇の出演者は翌年は裏方にまわるという仕組みです。そして観客が1回当たり4.000人、2日間で8.000人入ります。つまり、キャスト、スタッフ、観客含めて、1万二、三千人が、1回の野外劇を囲んで集まる人の輪をつくります。高岡市の人口は17万人、その野外劇はもう10年続いていますから、ほぼ人口に近い数の人たちが野外劇に関わったことになります。

そうすることで、ここに文化のネットワークができたのです。出演する人たちはいろいろな文化団体に入っています。学校や団体、企業が行政とすべての横ぐしで関わっていくことになります。野外劇を続けることで、素晴らしい文化のネットワークができあがってしまったのです。これはお年寄から子どもたちまでを網羅するものです。しかも、1年間かけて準備し、つくりあげていくそのネットワークは、かなり堅固なものです。

高岡の例で言うと、完全に1つのそういう形態はできあがっています。10年目の今年、私は久し振りに行ってみたのですが、成功している中にも「違うな」と思うことがいくつか出てきました。成功したからそれを延々と続ければいいという問題ではないということなのです。常にパイプのメンテナンスを繰り返さなければならないのです。まちづくりが、「単なるイベント」になってしまってはダメなのです。町をつくりあげていくための手段ではなく、目的になってしまってはダメなのです。ではどうメンテナンスしていくかということを、今現在、私は提案し、企画書として作成しています。

それが先ほど皆様方の質問の答えになるかもしれません。つまり、町全体にまた違う角度でその野外劇ネットワークを広げていくプロセスが必要になってきているのです。例えば野外劇を上演している現場、町のお城跡を使っているのですが、野外劇の当日はそのお城の周辺は大変賑わっています。ところが駅におりて、その会場まで行く間というのは何もない空間なのです。だから、そこの道程にある商店街が野外劇を口実に何かお客さんを迎える装置をつくれないものか、また、高岡らしさを出すために、それぞれの家が、玄関を、花なり、いろいろな焼き物なりで、自分の家らしく飾ったらどうかなどと考えています。1つの町、それぞれの家がパフォーマンスして、お客さんが通る道を楽しいものにしていこうというものです。

先ほどのいろいろなお悩みをお聞きした中に、ボランティアの育成ということが挙げられていましたが、高岡の場合を取り上げると、以前から既存のボランティア組織がありましたが、野外劇をやることによって、それに出演した人たちはみんな、自分たちの町に対する誇りと愛着を持って、外部の人に町の歴史を聞かれても答えることができるようになりました。市民全員がボランティアガイドになる日も、そう遠くないのではないかと思います。

それから、エコツーリズムという話もありましたが、これは、自然そのものを対象に考えるだけでは、アピールカに限界があります。例えば、万葉集は自然を大変讃歌しています。そしてまた人間讃歌でもあります。その万葉集の中で、大伴家持は高岡でたくさんの歌をつくりました。素晴らしい自然と人間の共生が詠まれているのです。そんな万葉集をモチーフとした野外劇では、ここ数年、地球の環境の問題を大きくアピールしているのです。文学や芝居の世界からも地球環境へのメッセージを発信できるのです。

先ほど成田美術館の話もありましたが、黒壁に人が集まるから、また黒壁とはひと味ちがったものを見ていただこうとつくられたのが、成田美術館ではないかと思います。だから黒壁を推進していらっしゃる方も、本当に成田美術館さんを仲間と思いながら、自分たちがつくった地図の中にそれを書き込み、そして一緒になって、こっちを訪れた方があっちにもおいでになるような仕掛けの輪を広げていくという、そういうことが輪をまた大きくしていきます。ぜひそれは気長に輪をまた広げていっていただければと思います。

先ほどのパネルディスカッションの時に話しましたように、一番簡単な例を言いますと、要するにその装置というのは「焚き火」です。焚き火は温かい。だからそのまわりに人が集まり輪をつくる。そういうことをイベント化することによって、だんだんとまちづくりに広がっていくのだろうという気がします。

今日、お聞きした中で番心に残ったのは、皆さんの中で大きな迷いとなっているというか、心配事としてあるのは、リピーターの問題も含めて、どう人と人とがつながっていくのかということだと思います。それをつなぐためのプロセスは、今、申し上げたとおりです。リピーターを求めるためにどんな広告宣伝をしたらいいかという話がよく出てきますが、広告ということの一番の基本はロコミです。自分の信頼する人が「あそこは行ってよかったよ」「おいしかったよ」と言うと、それはもうどんな宣伝文句で宣伝するよりも確実なのです。広告の基本というのは、そのロコミをどう補助するかだと思います。だからそのロコミをどう起こさせるか、そしてそのロコミをどう広く伝えるかということが広告宣伝する人たちの業務であって、そういうふうに考えることがリピーターを呼ぶ1つの方法ではないかと考えています。

何も結論めいたことはないのですが、私が取り組んだ野外劇、それは全くフランスのルピデゥフで起こったことを借用しただけなのですが、そういうようなことを自分たちの会社、行政、企業などの中で当てはめてお考えいただければ大変幸いだと思います。

それでは大変長い間、どうもありがとうございました。


以下は関連する記事の一覧です。 [一括表示]

[参考]パネルディスカッション(滋賀) - 【風来坊】 2003年2月12日(水)00:22 No: 16
......... ◆ 分科会A <「観光地づくり」とは「まちづり」> - 【風来坊】 2003年2月12日(水)00:24 No: 17
.................. ◆ 分科会B <豊かな資源を守り育てる観光づくり> - 【風来坊】 2003年2月12日(水)00:27 No: 18
........................... ◆ 分科会C <滋資県の集客力は強いのか弱いのか?> - 【風来坊】 2003年2月12日(水)00:29 No: 19


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