米国の対中戦略に巻き込まれる日本 [2006.09.11]
過去、日本で長期政権となった内閣、すなわち吉田・岸・佐藤・中曽根・小泉内閣は、いずれも親米の性格を
強く打ち出した政権であった。米国は日本の世論や政局を巧みに操り、自国に最も都合の良い内閣を作り、
維持させる力があるのかも知れない。
今、米国政府は、日本にアジア外交の苦手な政権を長期間維持することで、日本をアジアから切り離す作戦を
遂行している。日本をアジア、特に中国から切り離すことで、中国内の日本のシェアを米国が肩代わりすると
同時に、バブル時代に築かれた日米間の金融・経済の依存関係を徐々に米中の関係に変えようとしている。
今や世界一の外貨準備高を誇る中国ゆえ、その実力は充分にあるわけで、今後は米国トレジャリーをチャイナ・
マネーが買い漁る時期が続くだろう。
米国はそれにより、中国市場におけるプレゼンス拡大をはかるとともに、もともと核軍事力を持つ中国との同盟
関係を密接にすることで、在日米軍維持にかかるコストを節減したいところ。また、対中東軍事戦略のパートナー
として中国を味方につける方がはるかに国益につながるため、中央アジアの石油利権を惜しげもなくそっくり中国
に渡してしまった。中国による春暁ガス田の操業や沖ノ鳥島問題などは、冷戦時に築かれた日米安保の立場
から見ればゆゆしき問題のはずであるところ、にもかかわらず米国がひたすら静観しているのは、もはや従来の
日米安保体制と異なるシステムを前提にしている証拠である。米国にとり、中国はもはや仮想敵国ではないのだ。
またもし世界中に散っている中国人がイスラム原理主義と連携すれば、米国を中心とする軍事・経済ネットワーク
は致命的な打撃を受け、風貌の似た日本人・韓国人を含む東アジア人全体が巻き込まれる事態も考えられる。
米国治安当局としては対テロ捜索を、アラブ人だけでなく東アジア人にまで拡大しなければならなくなってしまう
わけであり、これは国家安全対策上、極めて深刻な事態といわざるを得ない。先手を打ち、東アジア人全体を
イスラムへの抑止力として確定することが米国にとって最も安全な道となる。
一方、中国当局としては少数民族問題が頭痛のタネとしてあり、回族がイスラム原理主義と結び付くことは当然に
警戒している。したがって、国策として性急に親米・反イスラム色を強めることには難色を示すはずであり、イスラム
穏健派との友好関係を維持・拡大しつつ、原理主義を排除してゆくことになろう。ここに米中両国政府の利害一致が
生じ、軍事・経済面で反イスラム原理主義の同盟関係になることが、両国にとって最も望ましい環境を作ることになる。
同時多発テロから本日で5周年となる。イスラム原理主義者が再び活動を活発化させる中、米国側の緊張は高まる
一方だ。アジアから見放され孤立無援の役立たずになった後の日本から、米国が手を引くのは簡単なことだろう。
(M・S)
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