中国朝鮮族社会の現状と未来　移動に伴う影響及び役割　[2005.11.13]　 


中国朝鮮族は、朝鮮半島からの移住がその始まりではあるが、中国に定着しながらそれなりの特質を持つように
なった。すなわち、第一に、中国朝鮮族は世界で人口が最も多い国の一員であり、多民族国家の一員であり、
また社会主義体制を維持している国の一員でもある。第二に、中国朝鮮族の祖先たちは現在の南北韓の出身で
あり、朝鮮族は南北韓という故国とも緊密な繋がりを持っている。第三に、地政学的に見た場合、中国朝鮮族は
東北アジア地域の中心地域の一つである中国東北地域に位置しており、現在は移動により韓国、日本、ロシア
及びアメリカといった東北アジア地域の重要な国々にも分布し、南北韓はもちろん、日本、ロシア及びアメリカ
などの国に居住している同胞たちとも密接な関係を有している。

かつて中国朝鮮族は、中国の特殊な体制の中で、数少ない公式的活動を除いては、一つの地域で閉鎖的な生活
を送って来た。１９８０年代に始まった中国の改革と開放は、中国人が国内各地生きの移動を推進しただけでな
く、世界に向けた歩みをも早めた。中国内でも文化的な素質が高く、情勢適応に敏感な朝鮮族は、彼らが持って
いる様々な優勢によって、改革開放においても、国内の他の民族よりも先頭に立った状態を見せてくれている。
特に朝鮮族の人口移動は、国内の他の民族とは比較し得ないほどの活発な様相を示した。

現在、約２００万の中国朝鮮族人口のうち、４０〜５０万ほどが東北の集居地域を離れて移動に加勢したと言っ
ても過言ではない。下の数字から分るように、一つには東北地域の朝鮮族比率は、１９９０年の97.14％から
２０００年には92.27％に落ちたが、これはただ統計に入っている数字だけであって、統計に入っていない数字を
加算すれば、東北地域以外の朝鮮族人口は相当な比率を占めるであろう。いま一つには、筆者が数回に渡って
行った現地調査によると、現在、朝鮮族集居地域の農村人口のうち、約１／３から１／４の人口が、もとの地域
を離れた事実が示されている。最後に、朝鮮族の国外進出もかなりの数に達している。韓国法務部の統計と
婚姻移動などの様々な推測によると、現在の在韓朝鮮族は約１５万人になっており、日本にも数万人がいると
推測されている。すなわち、現在朝鮮族人口内で国内移動が約２０万〜３０万人、国外移動が約２０万人になる
ということである。

急激な人口移動で朝鮮族社会は急激な変動と痛みを経験しなければならなかった。朝鮮族集居地域農村人口の
激減、大勢の女性たちの流出、他民族への耕作地の譲り渡しなどは、民族伝統集居地の縮小、民族基礎教育の
弱体化、チョンガーたちの結婚難、都市進出による民族性保持の難しさなど深刻な問題を露呈している。民族の
愛着心を持っている多くの人々は、このような問題を心配し悩んでいる。しかしここで止まったりしてはいけない。
私たち皆で知恵を出し合い、直面した問題を賢明に解決することが、我が民族の生きる道であるということを記憶
しなくてはならない。

中国の改革と開放で朝鮮族が先頭に立ったということは、新しい問題を先に受け止めなければならないと同時に、
改革開放の成果を真っ先に享受しているということをも意味する。現在、中国朝鮮族のこのような発展過程を他の
民族に先立って進め、現代意識も他の民族より早く持つようになった。このような与件は、朝鮮族社会の飛躍的発
展をもたらし、朝鮮族が近代民族へと成長する重要な契機となっている。

特に中国朝鮮族は、民族が持っている特殊な優勢によって、グローバル化の流れの中に加勢している。その一例とし
て、朝鮮族全体の約１／１０に達する人口が、現在、中国を去って世界の様々な国で国際化を体験しているという
ことである。朝鮮族の国外移動は、彼らの視野を広げ、国際センスを育ててくれるだけでなく、彼らが多民族、多文
化環境の中で身につけた経験を活かして世界各国の同胞たちとの交流を推進することで、民族的ネットワーク形成
にも重要な役割を果たしている。民族のネットワーク形成は、民族の和合と共存、東北アジア地域への平和と発展、
ひいては世界の平和と発展にも多大な貢献をすることが出来る。

もちろん、中国朝鮮族は、異なる地域、異なる体制のもとで長年生活して来た他国の同胞、特に韓国との交流におい
て、多くの葛藤と誤解があるにはあるが、時間が経つにつれてお互いに理解するようになるはずであり、葛藤も誤解
も次第に無くなるであろう。

かつて中国朝鮮族は国内で優秀な民族として評判が高く、他の民族の羨望をかき立てた。現在、中国朝鮮族は、発展
過程において困難に直面しているが、民族全体が力を出し合わせて努力すれば、依然として民族の優秀性を保ちなが
ら、中国社会発展、ひいては世界平和と共存に大きな力で貢献することができるであろう。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（中国社会科学院　鄭信哲）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　原文朝鮮語、翻訳：姜　香花