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地球化時代の’韓民族アイデンティティ’の模索 [2005.11.13]  


1.序
韓半島をはじめとし、全世界に分布し住んでいる700万の韓民族が世界平和と共同繁栄のため相互協力し、ひと
つのネットワークを構成しようという動きが、様々な形態で展開されている。本稿は、このような動きを’韓民族
共同体’運動と呼びながら、その前提となる共同意識としての’韓民族共同体’を3つの次元から説明し、地球化
・開かれた民族主義時代において望ましい’韓民族アイデンティティー’の姿を提示しようとする。これはもちろ
ん、’多文化社会における民俗教育’の模索に寄与しようとするものである。発表は、第一に、分断構造における
南北韓の異なる国民意識を探る。第二に、統一に向かう南北韓共同体意識の変化を考察する。第三に、’地球化
時代の開かれた民族主義’における’韓民族共同体’について叙述する。本稿の目的は、多国籍韓人社会の設定
と共同意識としての’韓民族アイデンティティー’の可能性について模索することにある。

2.分断民族主義と南北韓の異なる’国民’意識
分断体制における韓半島住民は、異なる2つの意識を発展させてきたと言うことが出来る。南北韓の異なる’官主
導民族主義’により、相互対立的な’国民アイデンティティー’を育ててきた。北韓は”共和国−社会主義−文明
−主体 対 米国−帝国主義−半文明−売国奴”という等式の教育を通じて、韓国は”米国−自由民主主義−韓国
−文明−民族 対 ソ連−共産主義−北韓−半文明−売国奴”の構造を通じて、それぞれの’国家民族主義’を
強化してきた。韓国戦争以降、南北韓の住民は、異なる近代化過程(北朝鮮の社会主義的経済復興過程、南韓
の国家主導型開発体制および資本主義的産業化過程)を経てきた。また、’敵対的共存体制’という分断構造の
なかで国家建設のための異なる政治動員体制(北朝鮮の社会主義動員体制と主体思想、南韓の反共独裁および
民主化過程)を経験した。20世紀後半期に南北韓が経験した異なる歴史的経験とその累積から見た時、互いに
異なる’国民アイデンティティー’が、’統一過程’を経て’民族的同質性が回復’すれば、容易に解体されるの
かは疑問である。すなわち、南北和解の精神とその間の両者の協力を通じ、達成された信頼を土台に、それぞれの
大切な経験(南韓の経済開発と民主化、北朝鮮の自主的思考)を互いに認め、共同財産として享有しなければなら
ないだろう。

3.統一へ向かう南北韓共同体:’韓半島の民族アイデンティティー’
南北はともに統一を志向する。韓半島に住んでいる大部分の住民は”統一が当然なことであり、異なる政治共同体
が永続するのは不自然なことだ”という点に同意する。韓民族は血縁共同体・言語および文化共同体・歴史共同体
だという点で意見が一致している。’韓民族’という共同意識の根拠は次のいくつかに求めることが出来る。第一
に、韓半島住民はいずれも”檀君おじいさんの子孫”としての同じ血の繋がりを持ち、高句麗など三国と高麗、朝
鮮の歴史を共有するという共同意識がある。第二に、旧韓末以降、外国勢力に対する’抵抗的民族’としての経験
を共有する。第三に、半世紀の間、異質化したとはいえ、言葉と文字は韓民族であることを確認できる最大の証拠
である。
このような共通点にもかかわらず、統一国家を形成していく過程で’韓半島民族主義’が、否定的に作用し得る点
を指摘することが出来る。北朝鮮は、1990年代の社会主義の崩壊以後、理念的対応として、民族主義を積極的
に前面に押し出している。南韓では、北の核問題ひいては統一問題について、’民族共助’か’国際共助’かにつ
いて、論難が行われた。韓半島が統一された後、いかなる民族主義を志向するのかは、周辺国家の関心事でない
はずがない。韓民族が平和愛好民族であり、侵略的であったことはない点を強調する必要がある。統一過程で民族
を絶対視する全体主義的談論が増幅することを警戒すると同時に、統一以後’韓半島の民族主義’が、富国強兵的
な膨脹主義に出る可能性はないことを示してあげなくてはならないだろう。’韓半島の民族アイデンティティー’
は、北朝鮮の主体的近代化と南韓の世界化的民主化の経験と長所・短所をよく包括し、新しい体制を作る統一過程
において導き出されるだろう。

4.地球化時代の開かれた民族主義’韓民族アイデンティティー’
韓民族は、代表的なディアスポラ民族である。中国の朝鮮族、日本の在日、独立国家連合の高麗人、米国の韓人系
などは、維持(有)の背景と歴史的経験、生存の社会経済的条件がそれぞれ異なっている。彼らの民族アイデンティ
ティーは、政治的民族主義とつながるよりは、多民族社会のマイノリティの問題と結び付けられながら、韓半島と
の繋がりを探そうとする’遠距離民族主義’の性格も持つ。1990年代以降、地球化の進展とともに、’韓民族
共同体’’韓民族ネットワーク共同体’などの論議が活発である。全世界に分散して住んでいる韓人たちが、いか
にして一つの共同体で結合するのか、共通の意識を持って生きて行くのか、という点である。現実的に可能なのは、
文化的な次元で韓民族としての紐帯感を強化し、連帯網を整え、相互利益の構造を作ることである。’コリアン・
ネットワーク’’多国籍民族共同体’などの論議は、新しい世紀、開かれた共同体の可能性を模索している。地球
化時代の韓民族共同体は多国籍共同体であり、多言語共同体である。汎地球的民族共同体の空間的核心は、統一さ
れた韓半島となるであろうが、空間的な場所よりも、連結網(ネットワーク)と共同意識としての、’韓民族アイ
デンティティー’が重要である。多国籍であり、多言語の在外韓人を、いかなるアイデンティティーを土台とし、
拡大された民族共同体意識として、くくることができるのか、今後の課題として残っている。
新しい世紀、開かれた’韓民族共同体’は、開かれた民族主義という全向的で開放された概念を前提とする。それ
は、汎世界的市民社会、’東アジア共同の家’ともつながる。この共同体は、韓半島の国内社会が、より多元主義
的、多文化主義的になり、健全な民主的市民共同体として生まれ変わることを前提としている。排他的・閉鎖的民
族意識を強調したり、民族同質性の回復を力説するより、’互いの違い’をまず認め、異なる経験の中で得られた
知恵を貴重な共同の財産とする姿勢をその土台とする。この意識は、在外韓人たちの互いに異なる歴史的経験を財
産とし、’開かれた民族’を肥やす様式にすることを要請する。離散の’コリアン・ネットワーク’は、’新しい
時代の新秩序’を模索するのに、また、’東アジア共同の家’を構成するのに、なくてはならない貴重な財産であ
る。韓民族共同体は、現存する領土国家中心の国際秩序を尊重しながら、情報通信技術の発達した地球化時代に
おいて交流協力ネットワークの新しい枠組みを組み立てることである。この共同体は、世界の中の韓人たちの、
多文化的で複合的性格を強化しながら、多様な次元の連帯が可能なネットワークであり、統一時代の開幕を早め、
世界化と東北アジア平和に貢献することを前提とする。韓民族共同体の基盤は、’開かれた民族主義’であって、
これは、世界市民主義、普遍主義、健全な個人主義、共同体主義、平和的な東アジア地域主義などと相互疎通が
可能である。

5.結論
21世紀の空間は地球化した複合空間である。人間は’国民’としての個人でもあるが、”地球的(Global)−地
域的(Regional)−国家的(National)−地方的(local)−個別的(individual)”な位相の重なった複合空
間の中に位置している。個人の’アイデンティティー’も、そのような脈絡において多元化し、複合化する様相を
見せている。私たちが多文化社会における民族教育を論じるとき、この点をまず念頭に置かねばならないだろう。
多文化主義は、多様性を重視し、文化的な社会的不平等の是正を持続しながら、より自由で豊で創造的な人間およ
び社会関係の実現を志向する。’民族主義への回帰現象’が著しい東アジア三国において、いつ多文化主義が満足
に定着するようになるのか、予想するのは難しい。’中華民族主義’が開かれた概念として進展し、日本の’普通
の国家化’が、民主主義と市民社会の伝統と責任に基づくことを願う。韓半島は、健全な開かれた民族主義を土台
に統合の道を歩むことを期待する。国境と民族を超える新しい’空間編成’である、多様な’東アジア共同体’へ
の模索が、持続的に試みられることを願う。このような流れの中にあって、’韓民族共同体’は、複合的であり、
多国籍共同体として、韓半島分断体制を克服し、新しい東アジアの将来を開拓する触媒となるだろう。

                                                 以上

                                     (韓国・鮮文大学 崔佑吉)
                                      原文韓国語、翻訳:宮島美花

<訳者注>日本語訳に当り、韓国人研究者が書いた論文であること、「韓民族」「韓半島」などのことばは韓国
では既に一般化した漢字語であることを考慮し、今回は、これらの漢字語を原文のまま活かした訳を行いました。
日本語では、それぞれ、韓民族→朝鮮民族、南韓→韓国、北韓→北朝鮮、南北韓→朝鮮半島の南北、韓人系
→朝鮮民族系ないしコリアン系、韓半島→朝鮮半島、韓国戦争→朝鮮戦争という意味になります。

		

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