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◆ [参考]中国における観光振興の努力
記事No/ 15 (親記事)
投稿者/ 風来坊
投稿日/ 2003年2月12日(水)00:19
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基調報告「中国における観光振興の努力(事例紹介)」

中国国家観光局大阪駐在事務所 所長 楊 振一
 

私は1996年までの中国国家観光局で勤務していた期間中に、日本をかつて18回にわたり訪問させていただきました。1997年1月に大阪に参りまして事務所長に赴任してから本日まで既に1年10ケ月が過ぎましたが、ここ滋賀県には残念ながら一度も来るチャンスがありませんでした。今日は皆様のおかげでここに来ることができまして大変嬉しく存じます。ここでこの度の国際観光交流促進ワークショップを主催し、私に講演の機会を与えて下さった財団法人アジア太平洋観光交流センター並びに関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。

中国国家観光局は中国中央政府(国務院)直属の機関であり、全国の観光事業を統括管理しているところであります。今年は中国の国務院は簡素化を図り、多くの部署を削減いたしましたが、しかし観光局を従来の通り保留致しました。これは中国政府が観光業の発展を大変重視していることを物語っています。

ケ小平氏はかつてこう明確に指摘していました。「観光業という作文には書くことが大変多く、重点的にスピーディにやらねばならない。」氏は観光業を国家の外貨獲得の重要な産業になるよう期待していました。現在、中国の各地方政府は観光業の発展に積極的に取り組み、一連の発展政策を次々と策定致しました。全国では既に22の省、直轄市、自治区が観光業を第9次5ヶ年計画の重点産業として発展させようとしています。これらの省や直轄市や自治区の中、10の省が観光業を本省経済発展の「支柱産業」、或いは「リーダーシップ産業」とし、7つの省は観光業を本省経済の「重点産業」、3つの省は観光業をサービス業において「牽引産業」として位置づけています。雲南省、陳西省、淅江省は観光業による収益が既に当該地域の国民総生産高の5%、北京や上海は13%を上回りました。

整理と簡素化された国家観光局は弁公室、企画発展と財務司、観光促進と国際連絡司、品質基準と管理司、政策法律規則司、人事教育司などの部門を設置致しました。

その中、観光促進と国際連絡司は以前は国際市場開発司と呼ばれ、私は長年そこに勤務していました。海外の観光客市場を開拓するため、国家観光局は海外に16の事務所を開設いたしました。日本には東京と大阪の2ヶ所にあります。私は1997年1月に国家観光局より大阪に派遣され、大阪事務所を開設し西日本地域に向け広報、推進を担当しております。

中国の観光業はまだ若い産業であり、しかし最も発展の速い産業でもあります。

中国の観光業は中国の改革開放政策によって決定され80年代の初期から誕生した産業です。今日までわずか20年の歴史しかありません。しかし、この20年の間、中国の観光業は飛躍的に発展を遂げ、現在では相当の産業規模を形成するまでになりました。

80年代の初期には中国は改革開放政策を打ち出し、長年閉ざされていた国の門を開きました。当時は多くの外国の友人が次々といち早く入国しようとしていましたが、当時の中国は交通輸送能力が低く、ホテルも極めて不足しており、また人材不足により、ガイド人数が少なく、観光バスも空調設備を備えていないなどの状況がありました。このため中国に入国する人数を制限せざるを得ませんでした。

当時は市場開拓などは不要で、ニーズがたくさんありました。北京、上海、西安、桂林、広州などは当時として人気の高い都市であるに関わらず、旅行者の泊まるところもなく帰る時にも航空券もなかなか手に入らないというものでした。

ホテルの例を挙げて申しますと、1980年まで全国でホテルがわずか203軒しかないのに対し1997年には5.200軒にのぼりました。しかも現在はすべて国際基準に照らして「星級」を指定しています。その内、全国の1/3の省に五つ星ホテル57軒、2/3の省に四つ星ホテル157軒を有しています。三つ星ホテルは895軒あり、全国各省にもあるというレベルになりました。さらに二つ星ホテルは1.339軒、一つ星ホテルは276軒あり、全国各主要な観光地にはこのようなホテルがすべて揃っています。

観光業を発展させるには人材の育成が欠かせません。中国は当初ホテルマネージメントの人材がほとんどありませんでした。当時の中国には招待所という宿泊施設しかありませんでした。その招待所には各フロアに服務員人配備し、各部屋のキーを束ねて持たせていました。彼女らは宿泊客が部屋にいるいないに関わらずいつでも部屋に入ることができました。宿泊客にはキーを渡していなかったのです。しかし宿泊客の方は海外でのホテルに慣れていたので、このような招待所方式にはとても慣れることができませんでした。そこで我々は近代的なホテルを管理する人材を養成するために多くの若者を海外に派遣し、勉強させる一方、国内では合資、合弁によって海外の管理者人材や先進的な管理技術を導入いたしました。

1978年に中国初の観光専門学校が誕生し、1997年まで観光大学及び観光学科を設けている大学は166校にのぼりました。この他、観光専門学校は42校、職業高校は637校あり、これらの学校に在籍している学生は20万人にも及んでいます。

これと同時に中国の航空業もめまぐるしい発展を見せています。航空会社は当時の1社から22社に増え、航空機の大部分はアメリカのボイングシリーズを採用しています。現在では航空輸送能力は完全に市場のニーズを満たしています。

高速道路の建設も飛躍的に発展しました。全長5.000キロメートルはすでに完成しています。北京天津間、青島済南間、上海南京間、藩陽大連間、海南島環状線など観光客がよく利用する路線は全て高速道路を整備しています。

列車のスピードも段々と速くなり、車両の設備も絶えず改善してきました。例えば上海から南京、蘇州、杭州、寧波、黄山まで、北京から天津、承徳まで、鄭州から西安まで、済南から青島までの間は設備の整った観光専用列車が開通しました。

これと平行して各地にも空調付きの大型観光バスを大量に導入しています。

以上述べた通り、様々な設備条件の改善により中国の受け入れ能力を大きく高めました。1980年中国に入国した海外の観光者数は570万人、世界第17位、外貨収入は6億米ドルで世界第34位でしたが、1997年には入国者数5.760万人で世界第5位、観光業による外貨収入は121億米ドルで世界第8位と著しくランクアップしました。1997年中国国内国際旅行の総収益は3.l12億人民元でGDPの4%を占めています。

WTOの予測によれば2020年になりますと中国は世界一の観光客受け入れ国になる一方、国内観光客の出国者数は世界第4位になるそうです。

観光業の推進を通じて我々は次のようなことを体得しました。

1. 観光業の推進を通じて各国の人との間に相互理解を促進し、友情を深め、世界平和に寄与できる。

2. 観光業の推進は中国の更なる改革開放を促進し、外資を導入する機会をより多く与え、経済発展の推進力となる。

3. 観光業は比較的に大きな連動機能があり、相関産業の発展に役立つ。

4. 観光業は労働力密集型産業で、雇用の機会を増やすことができる。(1997年現在、観光業に直接携わっている人は134万人、間接的に携わる人は670万人にものぼる。)

5. 観光業を発展させることによって貧困地域の経済発展を促進することができ、地域間貧富の格差を是正することができる。

滋賀県の姉妹都市は湖南省ですが、湖南省西部には山林地帯があり、そこに約3.000本を超える巨大な珪岩の柱が林立しています。1984年にこの美しい景勝地を発見し、武陵源と命名しました。92年には世界自然遺産に登録されました。以前はこの地域は大変貧しかったのですが、現在は空港も、道路もケーブルカーも近代的なホテルも整備され、国立森林公園にも指定されました。来年中国では、生態環境観光をテーマに観光業を展開しますが、中でもこの武陵源を重点地域として推進していくことになっています。観光業が発展することに伴ってこの地域は貧困からの脱出を図ろうとしています。

中国の観光資源は大変豊富です。整備することによって全国の約千以上の地域が海外の観光客を誘致できる観光地となります。
 

1. 歴史、文化を観光のスポット地として

中国は5.000年の文明の歴史があります。北京、西安、開封、洛陽、安陽、南京、杭州など7つの古都及び全国99の歴史文化都市には多くの文化遺跡が保存されています。これらの文化財を展示する博物館の中で比較的に有名なものに、北京故宮博物院、西安の陜西歴史博物館、上海歴史博物館、鄭州の河南博物院があります。また、万里の長城、大運河、都江堰、吹児井(カレーズ)など中国古代四大プロジェクトもあります。昨年12月までにユネスコに認証された世界文化遺産は周口店北京原人遺跡、万里の長城、故宮、承徳避暑山荘、敦煌、秦の兵馬踊、孔子廟、ポタラ宮殿、楽山大仏、蘇州庭園、平遥古城、麗江古城などがあります。

 
2. 豊かな自然を観光のスポットとして

中国の面積960万平方キロメートルある広大な土地は日本の26倍です。地域は幅広く、自然景観も大変奇抜で美しい。全国には標高8.000メートルを超える高山は7つあります。雲南省の玉龍雪山は主峰が5.596メートルで年中冠雪しており、北半球最南端(赤道に最も近い)の現代海洋性氷河です。そこへは現在ケーブルカーを2本整備しており、年中観光客を受け入れています。桂林の璃江、新彊ゴビ砂漠、内蒙古の草原などへも数え切れないほどの観光客が訪れました。ユネスコに登録している世界自然遺産は黄山、武陵源、九寨溝、武当山、峨媚山、泰山、盧山などがあります。

3. 民族風俗を観光のスポットとして

中国は多民族の国であり、56の民族が共存しています。多くの少数民族にはそれぞれ独自集落、居住地域があります。雲南省だけでも26の民族が住んでいます。各民族は長い歴史の中、独特な風俗習慣と文化芸術を作り上げてきました。例えば雲南省ナシ族の東巴文化は今でも象形文字を使っています。また、モーソ族母系社会の阿注婚(通い婚:ただし、一夫多妻ではなく、多夫一妻)なども具体的な例として挙げられるでしょう。各民族の異なる建築物、服飾、風俗儀礼、祝祭日、宗教、音楽舞踊、飲食などはバラエティー豊富で魅力溢れる民族風俗の観光資源を構成しています。 

4. リゾート地、余暇を楽しむことを観光のスポットとして

以前中国にはこれといったリゾート地はありませんでした。とはいっても、決してよい天然資源が無い訳ではありません。例えば海南島では、92年に国が国立観光リゾート地の建設を決定し、その結果五つ星級のリゾートホテル、ゴルフ場、ダイビングなどのマリンスポーツ、娯楽施設が次々と建設され、昨年は海外から観光客7万人がこの地を訪れました。
 

海外販促について

中国の豊富な観光資源を海外に向けてアピールするために我々は毎年テーマを決めて販促計画を策定しています。93年は「山水風光巡り」、94年は「文化財旧跡巡り」、95年は「民族風習巡り」、96年は「余暇行楽巡り」、97年は「中国観光年」、98年は「都市村落巡り」、99年は「生態環境巡り」、2000年は「世紀に誇る中国お国巡り」です。また、1996年にWTOのシルクロードシンポジウムの開催、97年PATA定例会議とコンベンションの開催を誘致し、成功致しました。この他、毎年ツアーを組んで世界中で開催されている13の大規模な国際観光交流会に参加し、また代表団を派遣して中国観光の説明を行い、さらに海外のマスコミを中国へ招待して取材してもらい、各種の観光PR資料を出版するなど精力的に取り組んでいます。日常的な広報活動は海外にある16の事務所を通じて行っています。
 

経営管理について

法律法規と業界の基準を制定しました。

業界に対する管理監督を強化するためにこれまでに、<旅行社管理条例>、〈旅行社品質保証金賠償暫定方法>、<旅行社主任資格認証管理規定>、〈旅行社取扱旅行傷害保険暫定規定>を既に制定しています。また観光ホテル及び国内河川観光船の星級選考基準、観光地・施設の安全性、観光サービス及び観光バス、ガイドのサービス品質基準などもあります。

観光都市の建設について

観光の基盤、施設状況、観光の環境を更に改善し、観光業全体の品質とサービスを向上していくために、近年来中国では「中国優秀観光都市づくり」キャンペーンを実施しています。1997年末までに全国で75の都市が立候補しました。中には4つの直轄市とその他の重点観光都市も含まれています。国家観光局は観光都市建設と検査の基準を設け、都市全体の観光経営水準から産業全体における位置づけ、環境、交通、サービス施設など18項目に及び明確な基準を定めました。今年は中国初の優秀観光都市をいくつか選出する予定ですが、今後は年を重ねるたびに検査し選考するつもりです。例えば桂林は近いうちに50億人民元を投入して空港、バスターミナルの建設、高速道路の整備、漓江の治水処理などを行います。桂林が代表的な観光都市になるよう期待をかけています。

 

品質の監督検査について

1997年、全国各省、直轄市、自治区及び観光業の発達した地域では観光品質管理所を設置し、3.000人規模の品質監査システムを導入しました。年間受理した苦情件数は1.799件で全体の86%に当たる1.548件の処理を既に完了しています。

 

ガイドの資格認定と試験について

各級のガイドは資格試験に合格しなければなれません。現在全国で選考試験に合格した特級ガイドは24名、高級ガイドは1.139名、中級ガイドは3.134名、初級ガイドは14.849名です。

 

以上、中国が観光業を発展させるために行ってきた取り組み、そしてその喜ばしい成果についてご紹介させていただきましたが、観光の先進国と比べればまだなお大きな差があり、我々が引き続き努力しなければならないことは十分に承知しています。

日本は我々にとって最も重要な集客相手国です。毎年中国に訪れる日本人は160万人にものぼります。中日両国は一衣帯水の友好隣国であり、2000年にわたる友好の歴史を有しています。来年は中国の雲南省で中国'99昆明世界園芸博覧会が開催される予定になっています。滋賀県からも多くの方が中国へ観光に訪れていただきますよう心から期待しています。

以上私の講演を終わらせていただきたいと思いますが、最後に皆さんに中国の観光についてのプロモーションビデオをご覧になっていただきたいと思います。

ありがとうございました。


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[参考]中国における観光振興の努力 - 【風来坊】 2003年2月12日(水)00:19 No: 15


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