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友好はお互いの尊敬から

加藤真司


私の父は韓国の全州で生まれました。明治時代の終り頃に私の祖父は徴兵され、当時の徴兵の守備に派遣されました。 祖父は長男でしたが、家計を支えるために除隊後も朝鮮に残って就職し、実家に仕送りをしていました。 私は戦後の生まれですが、当時の朝鮮の話を聞いて育ちましたので、子供の頃から韓国に対しては親しみと関心を持っていました。 そして数年前から韓国、北朝鮮へ旅行したり、戦前の朝鮮に住んでいた人達から当時の話を聞いたりしております。 そうした中で昨年、毎日新聞の紙面に韓日歴史座談会の記事を見つけました。ぜひ参加したいと思って総領事館に電話したところ、 快い返事をいただきました。以来、時間の都合の付く限り座談会に顔を出しております。参加してまず驚いたのが、 総領事をはじめ領事館の方々が非常に誠意を込めて対応して下さっていることです。また、毎回拝見している歴史番組についても 、日本にまで赴いた取材結果に基づいて構成されており質の高さに感心しましたし、領事館の方々が公務でご多忙な中で 番組を日本語に翻訳し同時通訳をして下さっているご苦労に感謝もいたしております。そのおかげで、日韓関係の深さを 改めて知ることが出来ました。

私は、韓日歴史座談会に参加してみて感じたことが二つあります。その一つは、「真の友好とは何か」ということです。 私は真の友好というものは、お互いを尊敬する気持ちがあってはじめて成り立つものだと感じました。現代でも 多くの国々が友好関係を結んでいますが、それは経済的利益や政治的メリットを求めた場合がほとんどだと思います。 しかしそうした関係はお互いの立場や環境が変わればすぐに解消してしまう可能性があります。 昔から日本は、韓国の高い文化を取り入れたり、貿易などによる利益を求めていたときには友好関係を保っていました。 しかし秀吉の時代や日韓併合の時代など力関係が変わると友好関係は破れてしまいました。私は真の友好というものはこのような表面的な 関係ではなく、どんな場合でも変わらないものであるべきだと思います。そのためには、人々がお互いの良いところを認め合い、 尊敬し合うことが必要だと思います。私は朝鮮からの引き揚げ者の人達から戦前の朝鮮での体験談を聞かせてもらっています。 当時は韓日両国にとって不幸な時代でしたが、そうした厳しい状況の中でも人間として尊敬される行動をとった 韓国人や日本人がいたという話を数多く聞いております。私は、こうした人々の体験を知ることによって真の友好関係の あり方を学ぶことができると感じております。

もう一つ私が感じたことは、「歴史の読み方」についてです。私は歴史を学ぶ場合には、主体的な視点から読むことが必要だと思いました。 もしも私達が歴史の研究者であれば、客観的に歴史を読み解かなければなりません。しかし、私達が歴史に学び、自分の生き方や社会のあり方 を考えることに生かそうとすれば、自分を歴史の登場人物の立場に置き換えて考えてみる必要があると考えます。登場人物の行動を、 第三者的に良しで評論するのではなく、もし自分が同じ立場に置かれたらどうするだろうかと考えてみることによって、他人の人生を通して 自分自身を見つめ直す機会にできると思います。そうした見方をすることによって、歴史を学ぶことが単に教養を身につけるという域を 越えて自分の生き方を豊かにし、真の友好関係を築く糧となると思います。
私は韓日歴史座談会でこうした有意義な事を学ばせていただいたことを感謝しております。また両国の友好のために尽くしておられる 多くの方々と知り合えたことは私にとって大変ありがたく、今後もこうした交流の会が続くことを願ってやみません。

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