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未来志向の研究会

「出版既成グループ」副会長 弁護士 内田 龍


東アジアのはずれにある日本と朝鮮半島は、極めて近い位置にあるにもかかわらず親密度が低い関係にあり、 依然として「近くて遠い国」という意識が一般的である。
しかし、当事国同士の感覚はともかく、恐らく第三者的立場から見ればこれほど文化的にも経済的にもあるいは政治的にも関係が深い国は ないのではないかと思われる。そしてこの深い関係は、近代的な国家成立以前の古代においては、本来の位置関係から見れば、 当然そうなるであろう関係が成立していたと思う。それ故に古代における日本(あるいは倭国)と韓半島諸国との関係は現代につながる 何かを示唆しているように思われてならない。
古代における我が国と韓半島周辺との関係は、「関係が深い」という表現では不十分なほど密接であった。 研究会で紹介された番組においてもよく引用された日本書紀は当時の交流を生き生きと描いているし、 考古学的見地から多くの発掘物も雄弁にそれを物語っている。
この研究会に参加させていただいて驚いたことは、韓国の放送局が日本と朝鮮半島の歴史を客観的に 表現しようとしている点であった。もちろんその立場と評価において韓国的視点のあることは当然であるが、 それも極めて控えめであったように思う。

このような番組が韓国で多くの視聴者を得ていることはとても意義深いことである。残念ながら 我が国の番組では、ここまで掘り下げて取り上げられているものは少ないのではないか。どんなことでも 「共通認識」の存在が理解の第一歩であることは間違いない。そして共通認識を創造するにはお互いの多大の 努力が不可欠である。
日本と韓国が互いに理解しようとしないことは、第三者の利益になることはあっても当事者の利益になることはない。 新たな世紀に新たな世代が共通認識を持ちうるよう、現在の我々が続けていかなければならない事柄は山積している。 この研究会が単発的ではなく継続的に実施されてきたことは、進むべき未来を志向するものであったと思う。

最後に本研究会を実施された柳洲烈総領事の英断と、卓越した語学力を生かして解説を行って頂いた 司会進行の金河永さんに心より感謝したい。

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