T 阿児町には、賢島のある神明以外に、有望な観光地として、 阿児町商工観光課 中村課長阿児町観光協会 会長 大屋 善臣氏の両氏から、名前があがったのが、「安乗(あのり)」である。漁師町でも「安乗」では、これから「フグ」が水揚げされる。伊勢えび以外の海の幸として注目されている。また「安乗埼灯台」から見る太平洋と的矢湾の景観は、印象的で自然観光資源として価値が高い。「安乗」の誇る文化資源として国指定無形民俗文化財の「人形芝居」が挙げられる。不況の影響で、この地も、観光収益は、減じているがバスにのみ頼っている交通の便を整備すれば、将来性のある観光地であると期待されている。
U 志摩エリア、奥志摩7町の各観光パンフレットを見て思うことは、町の魅力を紹介するのに、抽象的であるより、具体的であるほうが、インパクトが強いということだ。若い女性モデルが、温泉に入っているところや、観光資源の前で、笑顔を向けている写真を前面に押し出し、口当たりのよいキャプションや見出しをつけているのでは、伝えようとするイメージがあいまいな印象を受ける。私が、面白いと思ったのは、白亜の灯台、石坂や石畳の多い町並み、登茂山の夕景など、絵になる風景をもつ「大王町」が、まさに、その点をとりあげ、平成8年3月に「絵かきの町」宣言し、そのことを打ち出したパンフレットである。絵画展の「大王大賞」の作品を募集案内、スケッチポイントを案内したガイドマップ、絵描きさん、カメラマンを対象にした平日宿泊プランの案内 などは、要を得て、見たものを引き付ける。
V さて、最後に、今回、賢島を取材して、現在の観光開発のありかたに、私の思うところを述べ、現在の志摩エリアの観光エリアを盛り返す考察をしたい。観光収益の落ち込んでいる現状を、不況の責任だけにするのでなく、自己分析の結果、自己努力が必要であると考えるからである。そうでないと、ますます海外旅行に客足は向き、国内旅行の未来は、暗い。
W 良質の観光開発は、日本にとって、きわめて重要な課題である。そのためには、なにより、行政と民間の政治、経済、文化の代表者が、集まり、継続的な議論をすることが求められる。それぞれの業界において、個々の利益を得るために、他との差別化を、いたずらに図るだけでなく、議論の末、「共同の利益」のため統一的な観光指針を確立すべきである。