岐阜新聞ニュース

平成13年10月3日水曜日

[10月3日朝刊記事]

「豊年踊」46年ぶりに復活/7日、十万石まつりで再現/大垣市十六町


 拾六村(現・大垣市十六町)に伝承され、江戸時代に日本を訪れた善隣友好の使節、朝鮮通信使の行列を模した祭礼行列「豊年踊」が地元自治会の手によって四十六年ぶりに復活することになった。七日に同市で行われる十万石まつりの「朝鮮通信使行列」で再現される。本番に向けて、住民らが衣装合わせなど準備に熱を入れている。

 朝鮮通信使は江戸時代に日本に派遣された外交使節団。四、五百人の行列を作り、中山道、東海道、美濃路(垂井宿−宮宿)などを経て江戸へと向かった。朝鮮衣装を身に着けた行列の姿は、鎖国で他国との交流のなかった街道の民衆に大きな刺激を与え、各地に足跡が残されている。

 豊年踊もその一つ。農民らが通信使の仮装をして練り歩いたのが始まりで、約十年ごとに豊作の年を選び、地区民総出の大祭として行われていた。しかし、一九三三(昭和八)年以降は戦争のため途絶え、五五年に、当時、町の青年団長だった小堀政美さん(70)が中心になり、よみがえらせたのが最後の記録になっている。

 今回、通信使にスポットを当てたイベントが計画され、地元で再興の気運が高まった。幸い、行列で一人ひとりの役割を記した台帳、写真や衣装が保存されていたため、それらを基に、紅白の切り紙やススキの穂で飾る衣装のほか、独特の形状をしたラッパなど楽器も製作した。

 七日は十人が行列に参加する。小笠原正之・同町自治会長(65)は「古き良きものが簡単に失われていくのが今の時代。地元への愛着を深めるきっかけにしたい」と話し、これを機に、保存会づくりに意欲を見せている。

(写真)十万石まつりの「朝鮮通信使行列」に向け、準備に取り組む大垣市十六町自治会員ら=同町、十六公民館

《岐阜新聞10月3日付朝刊県内版》


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