伊勢平野の中心部に位置する城下町、三重県津市。 毎年10月上旬(今年は10月13日)、360年の伝統を誇る“津まつり”が盛大に行われる。祭りの目玉は、“唐人おどり”。きらびやかな衣装をまとい、おどけた面をかぶった行列が、身振り手振りもおかしく踊りまくる。聞こえてくるのはチャルメラ、ドラなどのエキゾチックな鳴り物。異国情緒たっぷりのこの踊りは、江戸時代の外交文化使節“朝鮮通信使”を真似たものだと考えられており、3世紀もの間、商人の町わけべ分部町の人々が口伝で守り継いでいるという。昨年4月、保存会の人々がオープンさせた資料館、“唐人の家”を訪ね、祭りの雰囲気を楽しみ、また、本番に向けての稽古の様子を見せてもらう。
|
|
陶芸家
半泥子が晩年使用した窯 |
津が生んだ陶芸家川喜多半泥子(1878〜1963)。 東の魯山人に対し、西の半泥子と言われ、かの北大路魯山人とも並び称されている。 半泥子が残した窯では、現在も弟子たちが作陶に励んでおり、美しい竹林に覆われた広大な敷地内には、ゆかりの品や建物がそのままに残されている。 伏見城の障子や、奈良・薬師寺の天井板を使った庵などを訪ねながら、その類稀な個性の一部を紹介する。
宮内省御用達“東京東洋軒”といえば、100年の歴史を誇る老舗レストラン。 そのただ一つの出張所が津にある。 昭和3年にオープンした“津・東洋軒”は、三重県の洋食店の草分けであり、ここから三重県の洋食文化が始まったとも言われている。津・東洋軒の設立を大きく後押ししたのが半泥子。 彼は、店の看板料理、“ブラックカレー”を大いに愛したという。 小麦粉とカレー粉を炒め、一月かけて作るというブラックカレー。創業当時から変らぬレシピを守っているというこの一皿を、東洋軒を訪ね、味わう。 津の西隣り、久居市。そのの西部に、清少納言が枕草子の中でたたえた榊原温泉郷がある。温泉郷の中にある湯元榊原館は、創業82年を迎える老舗。ここでは枕草子に記述のある料理を現代に甦らせている。うどんのルーツといわれる“はくたく飩”や、中国より伝来し、清少納言の好物であったといわれる“へいだん餅餤”など古式ゆかしい料理を味わい、さらに自慢の湯を楽しむ。
いつも変らぬ賑いを見せる伊勢神宮。 かつて、大勢の参拝客をもてなす物資の基地となっていたのが、蔵の町“河崎”。 運河としての機能を果たしていた勢田川沿いには、現在も80軒あまりの蔵が立ち並び、往時の面影をしのばせる。 水運が衰退し、蔵が役割をなくした現在、地元に暮らす町衆が再生をはかろうとたちあがり、飲食店や、美容院、喫茶店など様々な形で第2の人生を歩み始めている。 復活ののろしをあげる蔵の町河崎を訪ね、地元に暮らす人々の意気込みにふれる。 さらに、、伊勢大祭の新名物として17年前から始まった「伊勢のねぶた」の山車つくりに取り組む人々に熱意を聞く。
|