「歴史座談会から生まれた小さな韓日交流」

駐名古屋大韓民国総領事 柳洲烈

2001年9月、私の赴任先が日本の名古屋に決まると、韓国の友人達から「こんな時期に日本へ行って大丈夫か」と心配されました。 当時、韓日関係は教科書問題や小泉首相の靖国神社参拝問題でぎくしゃくしていたからです。
私は常々、国と国が良好な関係を築くためには市民レベルの交流が第一だと考えております。その頃、韓国のKBS(日本のNHKに当たる) で「歴史スペシャル」という番組が放送されており、韓日関係の歴史を多く取り上げていることを知りました。そこで自宅のビデオで録画した テープを持って日本へやってきたのです。

そして2001年11月、「武寧王」をテーマに第1回の歴史座談会を催すことが出来ました。大学の教授、ジャーナリスト、会社員等 この地域を代表するオピニオンリーダーを中心とした約30名の皆様の御臨席のお陰で新聞にも取り上げていただき、第1回目は好評を得る ことが出来ました。中には1300年前の韓日が良好で緊密な関係を築いていたことを知り、驚かれた方もいらっしゃいました。
ちょうど第1回目を終えた翌月の12月、今上天皇が68歳の誕生日を迎えての記者会見にて「私自身としては、桓武天皇の生母が百済の 武寧王の子孫であると続日本紀に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています」と発表され、再び武寧王が話題になったことで、 1ヶ月前にも同王を取り上げた当座談会を「先見の明があった」とお褒めの言葉を頂戴することもでき、それは第2回目以降の成功を予感させるものでした。


小さな韓日交流を熱っぽく語る柳総領事

その予感通り、当座談会は回を重ねるごとに参加者も増え、毎月韓日の1500年という長い歴史を振り返りながら理解を深めてまいりました。 当番組は韓国の制作によるものであるため、韓国側の目線で作られていますが、ビデオ上映後の座談会を通じて番組の意向や韓国の見方、考え方 を理解し受け入れてくださる日本の皆様に接し、そこに明るい韓日の未来を見る思いがいたしました。
韓国ではよく「韓国の歴史を知っている日本人は良い日本人」と言われます。現在の韓日は1日1万人が往来する深い関係にあり、その数はまだまだ 増加の傾向にあります。これらの人々が歴史について意見を交わすことが出来れば、益々両国の交流は深まることでしょう。良好な関係を 築いていた時代も不幸な時代も併せて知り理解することが、真の意味の未来を築くために必要ではないでしょうか。
当座談会の参加者の中には当館での勉強会だけでなく、韓国の地で実際に自分たちの目で確かめて体で感じてこられた方々もいらっしゃいます。 こうしてはじめた小さな火であった当座談会が、いつしか燎原の火のように広がり、未来志向的韓日関係を築く基礎になることを期待します。
中国に「愚公移山」という諺があります。初めはばかげたこと、絶対無理だと思われるような壮大なことでも、一本の鍬でいつしか大きな山を 移すことができるように、当座談会が市民レベルでの日韓関係のスタートの重要な位置に立てるよう、今後も努めてまいります。
現在20回以上続いている当座談会ですが、これもひとえに毎回ご多忙の中、当館までお越しくださる皆様のご協力、ご芳情の賜です。ここに改めて 感謝申し上げ、今後の存続、第2次、第3次の記念誌が発行されることを祈念いたします。
最後になりましたが、この度の刊行にあたりご尽力いただきました貫井正之氏、後藤和晃氏、星原幸次郎氏をはじめとする記念誌出版既成 グループの皆様に心より感謝申し上げます。


テレビ視聴風景