「韓日歴史座談会 記念誌出版期成グループ」会長
貫井正之


参加者と親しく質疑応答に答える会の代表 貫井教授
私は長年日韓関係史研究にかかわってきました。それだけに韓国史から見たKBSの歴史ドキュメントは 人一倍関心があり、韓日歴史座談会の毎月の例会を遅しと待った一人です。映像は毎回期待を裏切らない充実した内容でした。
この会は柳洲烈氏が駐名古屋大韓民国総領事に着任された直後の2001年1月にスタートしました。
その当時、日韓関係は小泉首相の靖国神社参拝、政界要人の朝鮮植民地皇帝発言、教科書問題などでかつてなくぎくしゃくしていました。総領事は これらの両国関係を憂慮され、同会の開設意義を「良好だった韓日史を学び、未来志向の関係を築こう」と位置づけられています。 氏がこの決断に至るには相当の勇気が必要であったでしょう。

北東アジアをめぐる情勢が緊迫している中、不特定の日本人が在外公館に出入りするのですから、不測の事態発生も充分想定されます。
それらの全ての責任は氏が負わなければならないのです。
この間2年余、同会は順調に毎月1回実施され、参加者は番組を視聴して、それぞれ感想を述べ合うというものでした。 出席者は各階層の人々で発言は多分野にわたり、時には専門的で鋭く、私も毎回啓発され続けました。
会の終了後、興奮さめやらず会で親しくなった方々と近隣の居酒屋で討論継続も楽しみの一つでした。 さらに会は、これだけにとどまらず韓国歴史の旅、20回記念シンポジウム、韓国台風被災救援カンパなども行いました。
同会への参加者数が一揆に増え、一段と活気を呈したのは、やはり02年6月の日韓共催のサッカーワールドカップからです。
AV機器も一新されました。現在では常時40席余の大会議室が開会前に満席になってしまうほどの人気ぶりです。 20回目を節目に融資の発案から、これだけ内容のある取り組みを自分たちだけでなく、もっと幅広く多くの日本人に知っていただくため 報告書の刊行ということになりました。
冊子は「過去から現在、未来へ〜韓日歴史座談会の記録〜」と題して、参加者の感想文、全回の放映レジメ、関連行事・新聞記事などを 編集して掲載しました。
同会で学んだ諸歴史事実を現在、未来の隣国との前輪関係に生かせればという思いをこめていますが、その意と両国の長い歴史関係が 読者の皆さんに少しでも伝われば、私たちとしては望外の喜びです。
最後に、同会を主催していただいた柳総領事様、煩雑な実務を担当していただいた孫・柳両領事様、毎回適切で丁寧な通訳と司会の労 をわずらわした金河永様をはじめ総領事館の皆様に心から感謝のお礼を申し上げます。
テーダニ、カムサハムニダ。



編輯子の思いつくままに・・・貫井正之(ぬきい・まさゆき)氏プロフィール

1937年生まれ、名古屋大学大学院文学研究科博士課程終了。文学博士(歴史学)、日韓(朝)関係史専攻。 高校教諭を経て現在、名古屋外国語大学・日本福祉大学講師。東海地方通信使研究会代表等。
著書:「秀吉と戦った朝鮮武将」、「豊臣政権の海外侵略と朝鮮義兵研究」、「豊臣政権の研究」、「秀吉・耳塚・四百年」、 「朝鮮通信使の旅」、「江戸時代、朝鮮通信使の基礎研究」、「松雲大師と徳川家康」など他多数。
書籍寄贈活動:かつて日本は朝鮮半島から膨大な文化財を持ち帰った。その責任の一端を果たしたいとして、2002年、韓国東国 大学校日本学研究所に四千冊の蔵書を寄贈した。その後も継続する。
韓国との交友:韓国との交友は幅広く、孔魯明氏(元駐日大使・外務部長官)をはじめ数多い。
韓国訪問:韓国への愛着は深く、毎年個人的訪問、団体の随行講師、韓国各種団体からの公演招聘など数えられないほど。
報道取材:新聞紙誌への論評、NHKテレビをはじめ、特に韓国KBSからも通信使関連や壬辰倭乱及び松雲大師番組制作時の取材を受ける。
頁の余白を埋めるのも編輯子の職務かと思いつくままに、氏の足跡の一片を編輯子の微小な記憶容量から綴りました。数多、漏れ在るはご容赦を。